英国小景
‘名もない土地の美しい自然と
素朴な人々によせる愛’
英文学史の講義ノートの裏表紙にそう小さく書き写したのは
18歳のときのことだった。
とある英文学者が‘英文学の永遠のテーマ’だと
どこかに記していたフレーズだ。
ジェフリズの「野外にて」や
ドロシー・ワーズワースの日記など
文学史の本には載ってもないような本ばかり
読んでいたあの頃、
それははなによりも心に響いたフレーズだった。
小豆色の講義ノートは いつも持ち歩いていた。
28歳になった今もまだ
私はこの言葉をいつも携帯している。
システム手帳の一枚にそっと書き留めて、
少し気恥ずかしく ひっそりと
それでもとても大切に
それは私のそばにある。
anonimours field in Cotswalds 1994