英国小景
目が覚めて、
しばらくは不思議な気持ちが続いていたよ。
ほんとうに、つい今まで
君とこうして話していたような気がして
それが夢だったなんて信じるのに
時間が必要だった。
崩れかけた修道院の庭に座っている。
流れゆく雲を、
その影が 古の原を横切ってゆくさまを見ている。
夏の日差しのその中に、秋の気配を微かに漂わせ
眠たげに時を刻むサマーセットの平原で
私達は考え込み、笑いあい、サンドウィッチを頬張っている。
何もかもくっきりと覚えているまま 目が覚めた。
会いたいね。
年賀状の決まり文句となって もう何年が過ぎたかな。
やんわりとした君の関西弁が
今朝はひどく懐かしい。
目を閉じれば 君と、私と、朽ちかけた石壁が
まだあの午後に閉じ込められている気がする。
Glastonbury 1998