英国小景
心地よい場所
一番はじめにみつけた心地よい場所は
部屋の片隅の張り出し窓のところだった。
とても幼い頃の話。
陽の当たり具合(とはいっても日当たりは悪かった。そこがまたよかった。)
オレンジ色のカーテン、
カラーボックスにひしめく本の背表紙の数々。
休日には父の黄色い車が窓越しに見えたりもした。
自分にぴったりの空気が流れている場所、
はじめてのそんな空間だった。
いろんな要素が一緒になって
ほとんんど奇跡的な偶然が重なって
私の心地よい場所、は完成する。
あるとき 自分の好きなものを数え上げていたら
それが全てイギリスという国に関わっていることに
きづいて驚かされたことがある。
そのとき 予感した。
あの北の島国は 私にとって心地よい場所かもしれない。
はたしてそこは
私にとって何番目かの あの薄暗い部屋の片隅だった。
しかも圧倒的だった。
私は無条件に こころが解放されるのだ。
無防備なまでに 自分を委ねられるのだ。
そう、たとえばこんな静かな光に満ちた食堂の朝の風景に。
Bath 1994