英国小景
教会へ行く 2
育った町、山口。
丘の上にははサビエル教会があった。
礼拝堂が畳で 入り口で靴をぬぐ。
中へはいると圧倒的な壁画。
見上げると足ががくがくしたことを
しっかりと覚えている。
ときどき どうしてもその空間に身を置きたくなることがあり
そのたびに私は坂を登った。
一人で、あの人と、制服で、自転車で。
映画化されたJ・L・カー原作の「ひとつきの夏」は
中世に描かれた壁画を修理しにきた若き修復工が
ヨークシャー地方の片田舎でひと夏を過ごす物語だ。
戦争で深く傷ついた修復工は 神などいないんだという思いで
ただただ仕事をこなしてゆく。
淡々と、そしてシニカルに。
「神なんかいるもんか、ヨークシャーの偽善者どもめ」!
それでも数十年後 年老いた彼はまたその教会へ戻ってくる。
コッツワルズの緑の中にたたずむ教会をみたとき、
映画のラストシーンに使われる賛美歌の調べが
風と一緒に耳元をすり抜けていった。
神がいるかは分からない。
でもそこには確かに、何かがある。
ゆえに私はまた、教会へいく。
Cotswalds, 1993