Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
結婚記念日のお祝いに、今年もDove Dottageへ行きました。 庭の緑を望む大きな窓、 アンティークのダイニングテーブルや ひとつひとつ形の違う椅子。 壁やドレッサーに飾られた額縁や絵皿。 やっぱりここには、イギリスの空気が流れています。 「このお部屋は 少し暗いね」と娘。 そうよ。私はこういう光が好きなの。 自然光と間接照明だけの、ほどよい明るさ。 イギリスはこういう感じが多いよ。 落ち着くと思わない? 私は今年も、ローストビーフのホットサンドウィッチを注文しました。 嬉しいことに、運ばれてきたお皿はウィロウ。 少し波打ったような表面に特徴のある、Spode社の気品あるウィロウです。 テーブルの古びた木肌は、まさにウィロウが一番素敵に見える舞台! 青色がこの上なく美しく映えて、 見慣れているはずのこの器に、あらためて見入ってしまいます。 そういえば、2年前に来た時は、飾ってあるウィロウは1枚でしたが 今回は、棚の上に1枚、ドレッサーに2枚、 そしてカウンターの隅にある時計までもが、ウィロウです。 さりげなく視線を泳がせながら、心でうふふ。 娘も気がつき、目を輝かせながら 「うちと同じブルーベリーのお皿だ!」 ・・・彼女、5回に1度は、言い間違えています。 その後、倉敷の町をそぞろ歩き、 アイビースクエアで、夕風に吹かれしばし休息。 蔦の絡まるレンガの建物に囲まれた空間で 沢山の人達が、それぞれに思い思いの時間を楽しんでいます。 オープンエアの心地よさを十二分に満喫して、 少し肌寒く感じる頃、家路に着きました。 おみやげにはやっぱり、Dove Cottageの鳩のビスケットを抱えて! 一緒に出かけて、一緒の場所に戻ってくる。 家族って、いいものだなあ。 これからもこのメンバーとなら楽しくやってゆけそうです。 (2005.9.24) |
ポロン、ポロロン 平日の午前中、 どこかからピアノを練習する音が流れてくると ‘ああ、ナツヤスミだ’ と思います。 季節が、ではなく 私自身が駆け抜けた感のある2005年の夏。 ご近所ピアニストさんの演奏を聴ける日は そう多くはなかったけれど。 陽が暮れてくると、 何をおいても、 Keith Jarrettの「The Melody At Night ,With You」. 詩情溢れるピアノの旋律は 熱のこもった夏の夕べに、鎮静効果があるみたい。 どんな暑い一日であっても、どんな慌ただしい一日であっても、 このピアノが流れると、 安堵とも、安らぎともつかぬため息を 心身が 大きくつくようです。 浴びるほど聴いても 慣れるということも、飽きるということもありません。 ところが不思議なことに 季節が移ろい始めると、 この衝動も少しづつフェイドアウト、 寒い季節にはその存在さえも忘れているほどなのですが 又、夏が巡ってくると求めてしまう。 そんな、音楽なのです。 Keith Jarrettのピアノと ヨーグルトを入れたレアチーズケーキで、 ひんやり、夏の終わり。 (2005.8.26) |
村人たちは高い誇りを持っていた。 村が市になることを「発展」とは思っていなかった。 緑の国土をいとおしみ、せいっぱい村をきれいにして住んでいた。 イギリスは世界で一番村の美しい国だと思った。 安野光雅氏の「旅の絵本」(福音館書店)のあとがきの一節です。 図書館でこの本に手が伸びたのは 以前目にした新聞記事を ふと思い出したから。 それは、この本を思い出の一冊だと語る ジャズボーカリスト、小林桂さんへのインタビューで、 ここに描かれている風景に 15歳で訪れたイギリス・ヨークシャーのそれが重なること、 そして、色や映像と音楽が密接にリンクしているという彼の中で その風景を前に響いてくるのは ‘ほのぼのとしているけれど、もの悲しい感じ’のメロディーだということが 述べられていました。 ’ほのぼのとしているけれど、もの悲しい。’ なんだか、自分がイギリスの田舎に持つ印象が凝縮されているような表現だなあ・・・ もちろんこの場合の ‘もの悲しい’は、あからさまにネガティブなものではなく。 急に この若きジャズシンガーに親しみを覚えました。 早速借りてきたCDをセットすると 流れてきたのは 大好きなスタンダードナンバー「Lullaby Of Birdland」。 どこか人なつこいその歌声は、 ウィロウのボウルに盛ったコーヒービスケットみたい。 軽くて、ほの甘いのに、心地よい余韻が残ります。 ライナーノーツによると ご両親もジャズミュージシャンという家庭で育った彼の記憶には 父親の伴奏で「Sunday」(これまた、お気に入りのナンバー!)を歌う母親の姿が残っているのだとか。 家庭の中にそんなシーンがあるなんて、素敵。 道理でアルバムの中の「Sunday」も、 音楽の楽しさに彩られているようなアレンジだったなあ。 え、世界一美しいイギリスの村の話はどうしたですって? ええ、もちろん、イギリスの村はとびきり美しいと思います。 ほのぼのとして、‘もの悲しい’というところが、ミソ。 音楽も、風景も、そういうニュアンスが潜んでいると ぐっと魅力的になるのですよね。 だから好きなのです、ジャズも、イギリスの田舎も。 (2005.7.20) |
神沢利子・作の「ふらいぱん じいさん」は、 娘のベッドタイムストーリーに欠かせない一冊。 90ページもあるというのに、 いつも一気に読まされるほどのお気に入りです。 きんいろのおひさんみたいな目玉焼きを焼くことが大好きなフライパンじいさん。 新しいお鍋の登場で、自分の出番がなくなってしまい すっかり落ち込んでいたある夜、 ごきぶりに(!!)こう励まされるのです。 「げんきをおだしよ、じいさん。せけんは ひろいんだ。 こんなところで くよくよ してないで たびに でたら どうだい」 そして始まる、ふらいぱんじいさんの旅。 じいさんが経験をする 新しい世界でのさまざまな出会いは 子供でなくとも、わくわくどきどき。 そして長い旅の行程を経て、じいさんの行き着く先は・・・・・ なにしろ、年老いている上に、旅の途中で弱ってしまったじいさんです。 けれども、じいさんは大好きなきんいろのおひさんを 一番 近くに感じる場所を見つけることができるのです。 台所に居た時とは、また違った形で。 人生には限りがあるし、 それぞれの、又、その時々の環境や状況によって、 できること、できないことがあります。 けれども、何か、自分の中心に据えたい大切なものがあれば それと一緒に生きてゆくのに、方法はひとつではないんだなあ・・ そして、時と共に、取り組み方やその力加減も変えてゆけるんだなあ・・ フライパンじいさんの、満ち足りた今に、 そんなことを思います。 さあ、夏本番。 どんな時にも 私達の頭上には 変わらず金色のおひさんが輝いてくれているように 自分の中のおひさんをいつもしっかり胸に持って、 私も、旅にでましょうか。 新しい一日の始まりを、 ウィロウの上のおひさんも応援してくれているようです。 (2005.7.14) |
バジルの風味豊かなジェノベーゼソース ・ クリームにまで抹茶を加えて巻いた抹茶のロールケーキ ・ 元気なアスパラガスをたっぷり使ったパスタやポタージュ ・ 小口ネギをこんもり乗せた冷や奴 ・ お酒と塩だけで炊く、ほっこり豆ごはん ・ お魚と一緒に蒸し焼きにしたインゲンは うっすらと油をまとい、いっそう青く、つややかで・・・・ 新緑の眩しい5月。 作りたくなるものも 不思議と緑色のもの多くなる気がします。 緑の元気を 体の外から、内から! 抹茶を加えた白玉だんごに 小豆を加えて、今日のおやつ。 ウィロウの青、抹茶の緑、 それぞれが、初夏にふさわしく つるん、とした白玉の喉ごしが涼やかです。 (2005.6.5) |