Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
砂時計の砂が落ちてゆくのを見ているように 行く1月、逃げる2月を、過ごしてきました。 今年は冬らしい冬で、日々しんしんと寒く 珍しく何度か雪も降りました。 独特のしづけさに包まれた朝は、雪の予感がします。 どこか確信を持ってカーテンを開けると、やはり。 あたり一面うっすらと雪をかぶり ベランダで見上げる灰色の空からは あとからあとから、白い雪たちが舞い降りてきます。 このままずっと冬だったらいいのにな・・・ 心の中のそんなつぶやきは もうすぐ冬時間が終わることへの名残惜しさだけではないでしょう。 季節が移ろえば、親子共に慣れ親しんだ場所に別れを告げて、 新しい環境に漕ぎ出していかなくてはいけません。 それはもちろん喜ばしいことではあるのだけれど・・・ 踏み出した先にはまた、新しい出会いが待っているに違いないのだけれど・・・ 時折、風に煽られた雪が顔にぶつかってきます。 部屋に入っても 雪の気配をより近くに感じていたく、 カーテンはひきませんでした。 できることなら止めてしまいたいけれど さらさらと砂が滑り落ちていくのを ただ見つめているしかない。 今日もまた、そんな寒い一日の始まりです。 窓の外はまだ雪。 窓枠を額縁に、まるで一幅の絵画を見ているよう。 冬の砂が全て落ちきってしまうまであとどのくらい残されているのでしょう、 卒園を控えた今頃になって、 ようやくお弁当作りに楽しみを見出し始めたりして。 ゴールが見えてなければ腰が上がらなかったかもしれません。 (とはいえ、週の半分は給食なのですけれど!) 野菜&玉子サンドウィチの今日は レモンカードを巻いたロールサンドもデザートに。 レモンカードはフレッシュなレモンの絞り汁、 卵とお砂糖とバターと合わせて作る 甘酸っぱいレモン味のカスタードクリームといったところでしょうか。 イギリスでは瓶詰めも簡単に手に入ります。 サンドウィッチのランチの時には 何かひとつ甘いロールサンドを添えたものでした。 ところで、サンドウィッチ。 私は具材が何であれ、 パンにバターと和からしをぬったものが好きです。 マスタードではなく、和からし。 野菜サンドだけでなく、玉子サンドにも和からし。 しかも、ちょっと多めに。 うふふ、変わっていますか? (2008.3.12) |
少々不格好でも、 口どけのなめらかさは合格点。 手作りトリュフでI LOVE YOU。 2008年のバレンタインデイ。 (2008.02.14) |
ドラマのラストシーンで
娘が赤い目をして涙をふいていた。 気づかないふりをしながら 私はただひたすらに お皿の上にちらばるクランブルを集め 知らないふりをきめこむ。 エンドクレジットをやりすごして 賑やかにCMが始まった頃、 さりげなく、涙のわけを聞いてみた。 そんなこと 無粋に決まってる。 でも、聞いてみたかったのだ。 「ママにはわからないよ。このきもち」 お腹がすいた時、おむつがぬれた時、体調の悪い時、 涙のわけを汲み取って ミルクを作り、おむつを変えて、看病をした。 人見知りに泣き、初めて出会う物に怯えていた頃は 「大丈夫、大丈夫」と抱っこした。 誰より先に涙のわけを知り それを止めてあげることが 私の役目だったのは ついこの間のことだった気がするのにね。 どんな風に心動かされ、涙が溢れたのだろう。 今はもう その気持ちを自分の中に留めておきたいんだね。 少し寂しくて、少し嬉しい。 ケーキを焼いた日。 ドアをあけるなり、ん?と立ち止まり 「ママ、ケーキ焼いたでしょ? 「アップルケーキかな・・・アップルクランブルかな・・・ だって、シナモンの香りだもん。」 ざんねん。 でも、なかなかするどいね。 今日はサワークリーム入りの生地に シナモンをきかせたクランブルをたっぷりのせて焼いた珈琲ケーキ。 珈琲は入っていないけれど 珈琲に合うから そんな名前なのだそう。 冬の午後に似合う、素朴であたたかみのある味がします。 玄関先で鼻を膨らませ、 切り分けるなりクランブル泥棒と化した娘も 春が来たら一年生。 (2008.1.25) |
ドライブの帰り、夕暮れ近くの道の駅は人影もまばら。 今年一番の寒気が流れ込み、海沿いの温暖なこの地でも 横なぐりの雪が吹きつけます。 「いたい!」と顔をしかめる娘の手を引き、 そういえば痛いほどの寒さを感じたのはどれくらいぶりだろう、と 肩をすくめて小走りに。 その時、そろそろ店じまいの支度が始まった店先で まるまるしたカリフラワーを見つけました。 そしてその瞬間、「あれを、作ろう!」 心にほっとあたたかな灯りがともった気がしたのでした。 あれ、とは その名も‘カリフラワーチーズ’ カリフラワーにチェダーチーズ入りのホワイトソースを絡めて焼く イギリス料理です。 ほっくりしたカリフラワーがホワイトソースとよく合って イギリスのお母さんアンも、つけ合わせによく作ってくれたものでした。 ほどよく歯触りの残る堅さ、が おそらく私達日本人の一般的なカリフラワーの食し方でしょうけれど こんな寒い日は アンに習ってほろっとやわらかくなるまで蒸してからオーブンに。 「カリフラワーチーズ」のレシピは「芸術新潮 2007年4月号」(新潮社)から。 特集はイギリス古寺巡礼で、 美術史家、金沢百枝氏がナビゲートする中世イギリスが なんとも‘しみじみ’‘にこにこ’(文中の表現をかりるなら)味わい深い。 時折登場する「食」についてのエピソードも、また楽し。 例えば、パブで頼んだチョコレートファッジケーキについて ’大きなケーキが生クリームのプールで泳いでいる感じ。 こうしたパブで出すデザートはたいていこんなふうで 「それがいいんだよねー」とクリスと意気投合する。’ そう、それがいいんだよねーと、私も首を大きく縦に振る。 例えば、食事の選択肢のない時について ’まずくなりようがない料理を選ぶ。わたしのおすすめはベイクトポテト。 じゃが芋を丸ごとオーヴンで焼いて、チーズやツナマヨを添えたもの。 ま、ほっぺは落ちないけれど ’ ふふ、ほっぺは落ちないけどねーと、私もにやり。 さて、金沢氏のカリフラワーチーズのエピソードはというと・・・ ‘イギリスの中学の家庭科でつくった料理を 家に持ち帰ると、まずくて誰も食べてくれないことがありました。 見た目はきれいなのに、犬さえ拒否したミント味のカップケーキや 喉がつかえそうなソーセージパイなど、葬りさられた料理が多いなか、 カリフラワーチーズは、めずらしく好評でした。’ まだしばらく寒い日が続きそう。 食卓にほっこり温まるカリフラワーチーズは、いかがでしょう。 しみじみ美味しいですよ。 ほっぺは落ちませんけれど、ね。 (2008.01.20) |