Blue willow のある食卓
    ーEveryday with Bluewillowーー



     

     

    千本ノックというものがあるけれど、
    どんなことも、一線を越える為には
    絶対的な量が必要になるのでしょう。
    ひたすらに、がむしゃらに
    とにかく量をこなすこと。

    千本は遙かなる数字だから

    ああもうだめ。これでいいの? 
    途中で何度も揺らぎそうになる。


    けれども千本を越える頃には
    新しい地平が見えてきて、
    やがて、量でしかなかった千本が
    土台となり、自信となって
    「質」というものに転化。
    手のうちに確かな実りをもたらせてくれる。
    私がそれを初めて実感したのは
    随分と遅く、
    進路変更を決めた高校三年の夏のことだった。


    太陽が照りつけ、
    熱風が渦をまいているような真夏日。
    娘の所属する小学校の合唱部は
    目指してきたコンクールの本番を迎えました。
    セミの声に包まれた夏休みの体育館で
    千本ノックの毎日を
    一日一日積み上げて
    30人みんなで手にしたのは 
     次なるステージへと向う切符。


    心から、おめでとう。
    ハーモニーは更なる高みに向って。




    しばしのお休み。
    いつも朝はやく練習に出かけちゃうお姉ちゃんと一緒で
    息子も嬉しそう。


    (2011.8.10)


       
    珈琲とお味噌。
    それぞれ、旅先の駅とスーパーマーケットで選んだ。
    どちらもその土地ならではの銘柄、
    そして我が家ではほぼ毎日食卓にのぼるもの。
    少しずつ味わいながら
    終わった旅は、
    まだ今も続いている。



    持ち帰った珈琲で
    今日はゼリーを作ろう。
    きらしていた生クリームを買いに出かけた先、
    お財布の中に見慣れない紙切れを見つけた。
    小銭に紛れたそれは
    旅先のスーパーマーケットのポイントスタンプ。
    カナカナカナ
    カナカナカナカナ
    七月というのに、
    海辺の町ではひぐらしが鳴き
    風は秋めいてさえいた。

    (2011.7.24)


    とても簡単なのに、
    作る度にその美味しさにはっとさせられる
    ビクトリアサンドイッチ。
    ビクトリア女王の名を冠した
    英国ティータイムを代表する焼き菓子です。
    ジャムをサンドするのが定番ですが
    フレッシュなレモンと卵をいただいたので
    作り立てのレモンカードで。
    爽やかなレモンが
    雨に降り込められた一日に香ります。

         

    最初に手に取ったのは「窓」。
    二月のことでした。
    そして、「祈」の三月。
    続いて「白」「花」「水」「野」。
    自分の気持ちに寄り添うテーマを選んで
    一編一編じっくりと時間をかけて読んでいるのが
    ポプラ社の短編アンソロジー
    「百年文庫」。
    日々、本やパソコンに文字を追いながらも
    読み散らかし、読み流していく言葉のなんと多いこと。
    せめて一日の終わりに、
    意識して、言葉の森の奥深くに分け入っていく時間を持つことは
    純粋な読書の楽しみというだけでなく、
    一日の慌ただしさの中で
    あちこちに乱れ飛んだ自分の気持ちを
    正しく整えてくれるような気さえするのです。


    このシリーズ、カバーもすっきりと美しく、
    それを剥いだところに現れる表紙の木版画もまた、
    作品と同じだけ楽しみ。
    「大人買い」というものをして一気に揃えてみたくもありますが
    やはりそこは折々の自分に尋ねながら
    テーマを選びとって買い進めていく方が
    楽しさも増すことでしょう。


    新しく手にしたのは、「青」。
    表紙に現れ出た夏の子供達の版画に
    部屋に残るレモンの香りも
    より一層、強く感じられます。
    雨の向こうには
    夏の予感が広がって。

    (2011.6.01)



       


    「チョコレートにはりぼんをかけて」は
    図書館で借りて読んだ後も、
    どうしても手元に置いておきたくて
    お願いして買ってもらった思い出の一冊です。
    小学二年生の時のことでした。
    タイトルから予想される
    小さな恋のメロディー風なお話ではなく
    小学2年生として共感できることが
    あれもこれもリアルに詰まった物語。
    小学生だって、学校に行きたくない日もあれば
    休み時間に外に出て遊びたくないこともある。
     そんな時、学校の中の秘密の隠れ家で(階段下の物置!)
    こっそり自分の気持ちを立て直す。
    これは、そんな時間をひととき共有した
    ゆうこと林君の物語なのです。



    この本を気に入ってくれた3年生の娘も
    恋のメロディーはまだまだ聞こえてこないよう。
    先日もクラスの男の子が遊びに来てくれ
    二人で盛り上がっていましたが
    それは‘チョコレートをあげたい人’というわけではなく
    「一緒にお絵描きしたりするのが楽しい友達」なのだとか。
    バレンタインが嬉しいのも
    仲良しの女の子とチョコレートを交換できるから。
    ふふ、確かにかわいらしいものは
    女同士の方が分かりあえるのかもしれません。
    かくいう私も
    「ノベレッテ」という名前の愛らしいチョコレートの小箱を見つけて
    思わず娘に、と買ってしまいました。
    素敵なものを見つけると、つい「見て、見て!」という気持ちで
    贈りたくなってしまうのですね。
    因みに「ノベレッテ」とはドイツ語で短編小説集という意味。
    シューマンのピアノ曲にも
    小さき佳きメロディーが詰まった同名の小品集がありますが
    チョコレートのノベレッテも
    まさに物語の詰め合わせ。
    色も味もとりどりのお花の形のチョコレートでした。



    バレンタインの日は
    朝からずっと雪でした。
    温暖なこの地域、
    ちらほら舞うことさえ滅多にないのに
    一日中なんて本当に珍しい。
    キッチンの磨りガラス越しに
    降りてくる雪の影を感じながら
    チョコレートムースを作りました。
    息子がお昼寝している間に「チョコレートにはりぼんをかけて」も
    何度目かの再読。
    転校した林君にお礼のチョコレートを届けただけなのに
    クラスメートにからかわれて 教室を飛びだしたゆうこ。
    秘密の隠れ場所でひとしきり涙を流しますが
    彼女を探す先生の声を聞きながら
    「こんどの チャイムが なったら、しらんかおを して でていこう」と
    決心する最後のシーンも、
    やはり、いい。


    雪の降るバレンタインデー。
    甘いチョコレートと、甘過ぎない物語。
    夕食は・・・豚汁でしたけれどね!


    *「チョコレートにはりぼんをかけて」
    宮川ひろ 作  伊勢 英子 絵
    (ポプラ社)

    (2011.2.14)