Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
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クリスマスの朝。 まだ微かに蝋燭のにおいが残る台所で 箱をあけると 残り少なくなったケーキの傍らに もみの木はあった。 枝にうっすら粉雪を纏ったプラスチックのもみの木。 一緒に飾られていた 砂糖菓子のサンタやトナカイは すっかり食べてなくなってしまったけれど、 もみの木だけは まだ箱の端に横たわっている。 イブの夜、蝋燭のもとで見た美しさはない。 根元にはバタークリームもついたままだ。 それでも、そのちゃちでちっぽけなもみの木には 「冬時間」の静けさが確かに宿っていた。 小さかった私にそれを言葉にする力はなかったけれど あの時の高揚は つまりそういうことだったのだと 今は分かる。 あれから、ずいぶん時が流れて クリスマスケーキは あの頃とは比べものにならないほど洗練されたものになった。 形も味も趣向を凝らされて うんと華やかだ。 それでも、この季節になると 不思議なことに、 あのもみの木をあちらこちらで目にする。 それは変わらずケーキの上にのっていて 変わらず、ちゃちでちっぽけなプラスチックなのだけど 変わらず、「冬時間」の静けさを宿している。
クリスマスを待つ日々。
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赤茶色の煉瓦の煙突が
(2011.12.15) |