Blue willow のある食卓
    ーEveryday with Bluewillowーー













    クリスマスの朝。
    まだ微かに蝋燭のにおいが残る台所で
    箱をあけると
    残り少なくなったケーキの傍らに
    もみの木はあった。
    枝にうっすら粉雪を纏ったプラスチックのもみの木。
    一緒に飾られていた
    砂糖菓子のサンタやトナカイは
    すっかり食べてなくなってしまったけれど、
    もみの木だけは
    まだ箱の端に横たわっている。
    イブの夜、蝋燭のもとで見た美しさはない。

    根元にはバタークリームもついたままだ。
    それでも、そのちゃちでちっぽけなもみの木には
    「冬時間」の静けさが確かに宿っていた。
    小さかった私にそれを言葉にする力はなかったけれど
    あの時の高揚は
    つまりそういうことだったのだと
    今は分かる。


    あれから、ずいぶん時が流れて
    クリスマスケーキは
    あの頃とは比べものにならないほど洗練されたものになった。
    形も味も趣向を凝らされて
    うんと華やかだ。
    それでも、この季節になると
    不思議なことに、
    あのもみの木をあちらこちらで目にする。
    それは変わらずケーキの上にのっていて
    変わらず、ちゃちでちっぽけなプラスチックなのだけど
    変わらず、「冬時間」の静けさを宿している。


    (2011.12.25)





    クリスマスを待つ日々。
    まずは定番のクッキーを焼く。
    一年ぶりに缶を開けて
    クリスマスモチーフの型を取り出す楽しさ。






    クリスマスを待つ日々。
    分からないなりに‘しゃんたしゃん’が気になる息子に
    茶々を入れられながらも、
    今年はアンデルセンの「The Fir Tree」を
    娘と一緒に読んでいる。
    10歳になった娘、
    複雑な想いを抱きつつも
    まだサンタさんを信じて待っている。


    きっと、サンタさんはやって来る。
    だってサンタさんは信じている人のところにだけ来てくれるのだから!


    (2011.12.22)







    赤茶色の煉瓦の煙突が
    曇天にいくつも伸びるロンドンの街。
    どんよりと寒々しい空を見つめる
    少女の横顔は、凛々しく
    どこか厳しささえ感じられる。
    彼女は、いったい誰?


    まず、何よりもこの絵に惹かれたものだから
    それがセーラだと分かった時には
    驚いた。
    これが、「小公女」セーラ?
    バーネットの「小公女」は
    幼い頃、いわゆる全集のようなもので
    読んだことがある。
    妹と二人、テレビで放送されたアニメを
    見たこともある。
    どちらも楽しんだに違いはないけれど
    とりわけ心に残っていたというわけでもない。
    どちらかというと、他でも見知っているような物語という
    印象さえ受けていたように思う。
    しかし、この絵のセーラからは
    記憶の中のどのセーラとも違う何かが感じられる。
    その何かが、気になる。
    今一度、「小公女」を読んでみよう・・・





    果たして、新しい発見を
    夜な夜な楽しんでいる。
    この度、翻訳に取り組まれた高楼方子氏は
    バーネットが「小公女」の17年前に書いていた
    先行作「セーラ クルー」にまで遡り
    一歩踏み込んだセーラ像を導きだしたと言う。
    より精確な訳文が
    「小公女」の新しい魅力に光をあてる。
    そして、その世界が
    アメリカ版初版本に使われていた
    エセル・フランクリン・ベッツの挿絵と
    これ以上ないほど
    ぴたりと合っていて
    本として申し分のない存在感を備えているのだ。
    ラベンダー色の栞がまた、素敵だ。


    慌ただしい12月。
    紅茶をいれて、
    こんな一冊を繙くひとときは
    心をそっと鎮めてくれる。
    新しいセーラに会う時は、きりりと紅く澄んだ
    ストレートが気分。
    寒い夜、お腹の底から熱く満たされるのは、
    紅茶だけでなく、
    帯に書かれたフレーズのせいかもしれない。


    「想像力こそ、生きる力」



    *福音館古典童話シリーズ 41
    「小公女」
    フランシス・ホジソン・バーネット 作
    高楼方子 訳
    エセル・フランクリン・ベッツ 画


    (2011.12.15)