Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
厚い雲がたれこめる 肌寒い夕暮れ。 「ドアにかけてあったよ」 下校してきた娘が、紙袋を下げている。 覗き込むと レモンが目に飛び込んできた。 店に並ぶものよりなめらかな手触りで 形もぷっくり愛らしい。 実家から沢山送ってきたので、と 友人からの手紙も添えてあった。 外は既に薄暗く いよいよ小雨もぱらつきはじめたが、 レモンの鉢を置くと そこにぽっと灯りがともったよう。 テーブルを囲む私達の心の中にも、 あかるいレモンイエローの灯りがともった。 さて、翌朝。
空はきれいに晴れ上がったけれど、気温はぐんと低い。 久しぶりにレモンティーを入れようか。 高校時代、よく母が土曜日のお昼に レモンティーとサンドウィッチを準備してくれていたなあ・・・ (2012.12.03) |
秋もいよいよ最終楽章。 見上げる木立には 幾重にも色が重なり 陽射しの加減や、吹きつける風に 次々と新しい表情を見せてくれる。 まだ紅葉も始まる前、 バイオリニスト、庄司紗矢香さんのリサイタルに行った。 彼女がバイオリンを捧げ持つように すっと背筋を伸ばして舞台に現れ出たところから、 音楽は既に、始まっていた。 濃密な時間の余韻は薄れることなく 以降、CD「Live at The Louvre」を聴き続けている。 「人生の感じる全てを音色に」 以前、インタビューで読んで印象に残っているフレーズだ。 自分の生きる全てが、自分の奏でる音となる。 人生にそのようなものを持てる人というのは・・・ 羨望、にも及ばないから ただただ旋律に埋もれてしまうしか術がない。 幾重にも重なる音と、刻々と表情を変えるイメージに 喜んで翻弄されながら ボルドー色の季節は深まっていった。
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「1」のキャンドルは、赤色だった。 感慨深く、二つほど買う。 「1」ふたつ分の年月を思いながら。 外では、ぴいぷう風が鳴り 夕方まで絶好調だった息子は 早々と夢の世界へ。 少し残念ではあるけれど、 3人で暮らした年月が長かったから こんな風に落ち着いた食卓も なんだか懐かしいね。 主役がキャンドルを吹き消したら 焼きたてのアップルカスタードパイを切り分ける。 フォークを入れると 熱いカスタードクリームに包まれた 甘酸っぱい林檎。 幸せの詰まったパイは ただ、ただ、あなたのために。 娘、11才の誕生日。 (2012.11.13) |
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