Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
三月うさぎに招かれて 小学生の頃、気になる本があった。 タイトルが気になる。 挿絵もかわいい! だけじゃない不思議な魅力。 あちらこちらで紹介してあるから どうやら有名なお話らしい。 でも、何度手に取ってみても挫折。 ・・・面白さがよく分からない。 それが正直な感想だった。 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」との出会いは そんな風だった。 楽しさに気がついたのは、英語講師として原文に触れてから。 言葉遊びとナンセンスがちりばめられたこの作品には、 やはり英語ならではの面白みがあり 中途半端に訳してしまうと、 どうしてもオチを解説する野暮になり兼ねない。 教える立場にありながら、 野暮を繰り返す自分にため息ばかり。 作品の魅力の入り口に立ちながらも その先に向かうことはないまま、時が流れた。 そして、この数ヶ月。 我が家はアリス一色に染まることとなった。 娘が所属する小学校の合唱部で この作品のミュージカルを上演することになったからだ。 作品の魅力にまずどっぷりと浸かったのは、娘だ。 ミュージカルの練習はもとより、 原作の面白さにも夢中になり 暇さえあれば本を片手に、 ニヤネコよろしく、にったりにやにや。 関連本は読み尽くし、 ビデオになっている映画や舞台は 片っ端から借りて観る有様。 この機会にと一緒に原書を読みはじめ 同じくにったり笑っているうちに 私もその世界の奥深きに、徐々に足を踏み入れることとなっていった。 歌と夢と冒険と。 子供達の作り出した舞台は、まさしくワンダーランド! ミュージカルは大成功を収め 合唱部の一年の集大成を飾った。 オープニングの音楽と共に幕が開いた時の、 皆のキラキラとしたあの眼差し。 カーテンコールで再び幕が開いた時の、 達成感に溢れたあの笑顔。 客席では、19世紀のイギリスから時空を超えて ルイス・キャロルも微笑んでいたに違いない。 「アリス、起きて。お茶会の時間よ」 お姉さんに起こされたアリスは 自分が経験した冒険が夢だったと気づいて、物語は終わる。 一方、本番は終わっても興奮冷めやらぬ娘。 「私のアリスの物語はまだまだ続くよ」 そんな彼女につられて すっかり歌や台詞を覚えてしまった息子。 イモムシ先生にドードー鳥、それからハートの女王様。 可笑しく不気味でちょっぴり怖い登場人物は 三歳児の心もがっしり掴んで離さない。 我が家のアリスブームは、まだまだ続きそう・・・ でも、まずは、お茶会! 三人でクッキーの生地をこねながら、 口ずさむのは、やっぱり劇中歌。 ♪ゆめがまってるみらいの すてきなとびら おもいきって おもいきって ゆうきだしていこう すてきなとびら(※1) 愛に満ちた人生とは、 あらゆる幸せのなかでただひとつ追い求める価値のある本物の幸せを 求め、見出して来た人生のことなのですが その幸せとは何かというと、 それは、自分だけではなくみんなを幸せにすることの幸せなのです! ルイス・キャロル(※2) * ※1 「勇気だしてオー!」 作詞 中山知子 作曲 越部信義 少年少女のための合唱ミュージカル ふしぎの国のアリスから * ※2 「不思議の国のアリス」 ルイス・キャロル作 脇 明子訳 岩波書店 (2013.3.15) |
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