Blue willow のある食卓
    ーEveryday with Bluewillowーー








    ちょうど一年くらい前に、
    テレビで80歳を越えた御夫人がおっしゃっていた。
    「私は家のことしかできませんけれど
    たとえば、遠足だってなんだって
    家に帰るために行くようなものでしょう」



    御夫妻で菜園を作り、
    自らが食べるものを育て、料理し、保存し、
    満ち足りた様子で日々を送られているその方の言葉は
    スーパーで手軽に食材を調達し、
    土に触れることのないマンション暮らしの私とは
    次元が大きく異なるものだろう。
    それでも私は大きく頷ずかずにはいられなかった。
    そうよ、そう!
    遠足だってなんだって
    家に帰るために行くようなものなんだから!



    たとえそれがほんの数日であっても、
    留守から戻り、
    また、自分の台所に立つと
    新鮮で、しみじみ嬉しくその言葉が蘇ってくる。
    旅先の上げ膳据え膳も、
    帰省先での母の手料理も
    文句なしに美味しくて、有り難い。
    でも、それは、自分自身の暮らしが、
    帰るべき場所があってこそのことだと思う。






    旬のトマトととうもろこしを使ったスープ。
    新聞でレシピを知ったのが夏の初め、
    以来、この夏は何度も作った。
    トマトの酸味、とうもろこしの食感が生きたスープに
    卵をふんわり溶きいれて、片栗粉でとろみも少々。
    風味づけのごま油と、黒胡椒が効いて
    薄味でも味わい深い。



    夏バテをしているのに、
    夏バテをする暇もないほどの勢いで過ぎて行った夏、
    ちゃんと食べている、
    食べさせている、ということが
    日々の支えとなっていた、確かに。


    (2013.8.23)

     

      

    おみやげは・・・





    瞼の裏に残る太平洋の青と、
    足の裏に残る熱い砂浜の記憶。





    小豆色、翡翠色、チョコレ–ト色、白・・・
    夢中になって集めた石。





    ガラス工房での思い出。

    無骨で雑然とした工房は
    工夫とアイデアが詰まった
    さしずめ実験室か、工作室といった具合。
    1200℃に燃える炉があり、冷却庫があり、
    そこで生まれたガラスの作品たちが
    「おばあちゃんの嫁入り道具」だったという箪笥の上で
    愛嬌たっぷりに並んでいた。
    大きな扇風機がぶんぶんと回る工房には
    二匹の猫が気侭に出入りして、
    窓の外の畑には、夏野菜が実っている。





    「小さな」に込められた想いに
    大きな優しさを感じる海辺のガラス工房、
    小さなガラス工房 透千。
    工房のすぐ裏山は、四国八十八ヶ所三十二番札所「禅師峰寺」
    蝉の音に囲まれて石段を登って
    また、大らかに広がる青色に出会う。





    後日、吹きガラス体験で娘が作った
    コップが届けられた。
    あの日の海、そのままの色のコップ。
    もっと買って帰ればよかったね、の
    芋ケンピと一緒に。



    (2013.8.17)