Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
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「とれたてのトマトだよ。」 キッチンの窓辺に、息子が庭のミニトマトを届けてくれる。 朝から、蝉の大合唱。 「娘が小学校の合唱部時代に歌った中で 「セミ」という合唱曲があった。 ‘土の中から、今朝、出てきて、 もう、セミが歌えている 習ったこともない、聞いたこともない、 遠い祖先の日の歌を・・・ 遠い祖先の日の節で・・・’ 少し長めの、しっとりと美しいピアノの前奏のあと、 「セミ」は、こんな風に始まり サビの部分で‘たいよう、ばんざい たいよう ばんざい’と歌い上げる、 歌詞も旋律も、それはそれは素敵な合唱曲だ。 つりスカートを履いた小学生が歌う「セミ」には ある種のせつなさが伴った。 あれから、数年、 合唱部員はほとんど同じ中学校に進学したけれど そこに合唱部はなく、かろうじて同好会があるばかり。 別の部活動を始める仲間も多く、 それでも歌いたい人だけが、同好会とかけ持ちに。 娘も、他の部活動をしながら、歌い続けている。 練習はもっぱら、地域の公民館や 正規の部活動が使った後の、夕方の体育館だ。 小学生の頃から出場してきた夏のコンクールまで あと、わずか。 今年もまた、熱い季節がやってきた。 ただ、「金賞」という明確な目標のあった小学生の頃とは異なり、 両手にも満たないメンバーしかいない最小ユニットで 何を求め、どこを目指して それでも、コンクールという戦いのステージに立つのか・・・ それを考えながら、日々自分たちの練習を重ねていくことが 中学生なら、もう可能なのだろう。 あどけない表情で「セミ」を歌っていた少女達は この夏、恋の歌を歌う。 毎日こうも暑いと、「たいよう ばんざい」という気分には なかなかなれないけれど まっ赤に熟れたトマトに太陽の恵みを感じつつ、 今日もまた、日が暮れるまで、蝉の大合唱の中にいる。 * 「セミ」 まど みちお 作詞 吉岡 弘行 作曲 児童(女声)のための合唱組曲「虫の絵本」より 土の中から、けさでてきて もうセミが うたえている ならったことも ない きいたことも ない とおい そせんの日の うたを とおい そせんの日の ふしで うたはもえて こずえへのぼり くもをつきぬけて そら へとのぼり たいようの手に すくわれて そのゆびに あそんで ちりこぼれ たいよう ばんざい たいよう ばんざい たいよう たいよう ばんざい ざい ざい たいよう ばんざい たいよう ばんざい たいよう ばんざい ざい ざい また ふるさとの うみやまかわへと しんしん まいおりてきて きらめきながら ゆらめきながら とおい しそんの日の なつに 土の中へと しみとおっていく また もえのぼって いきたくて きらめきながら ゆらめきながら とおい しそんの日の そらへ * 今年の暑中お見舞いは、この歌に代えて・・・ 願わくば、いつか、どこかで この歌を聴く機会と巡り合われますように。 どうぞ、よき夏を。 ふしの (2015.7.29) |
特に理由もなく、 自分で作ろうと思うことさえなかったパンを このところ焼いている。 何の知識も気負いもなかったゆえのビギナーズラックに味をしめ、 気が向くと、無心で生地を捏ねる。 もっぱら、食事用のシンプルなプチパンが中心で・・・ ・・・ときどき、シナモンロール。 食感、甘さ、フロスト、 自分好みの珈琲に合う、自分好みのシナモンロール。
どんなに小さな幸せであっても、
(2015.7.20)
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