Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
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何枚か引き出してみてから、くり返し聴かれているらしい、ジャケットの擦れたレコードを選んだ。
クリフォード・カーゾンという、 サーの称号がついたピアニストのブラームス「ピアノ協奏曲第1番」だった。 プレーヤーのアームをゆっくりおろす。 もく、と鼓膜を押すような音がしてから、 秋の日差しのようにどこかに寂しさをふくむ曲がスピーカーから流れはじめる。 (略) キッチンから出てきた麻里子は、ソファの前のテーブルに ころんとした茶色いティーポットとミルクピッッチャー、 飾り気のない白いカップをふたつ置く。 第一楽章が終わるのを待っていたかのように、チン、とオーブンの音が聞こえ、 甘く香ばしい匂いが漂ってきた。 ぼくはレコードをひっくりかえし、B面に針をおろす。 麻里子が焼きたてのスコーンとクリーム、ジャムの瓶を運んできて、 向かいのソファに腰をおろした。 「さっき紀伊国屋でスコーンをみたら、急に食べたくなったの」 「手品みたいに早いですね」 「だって混ぜて焼くだけだもの。熱いうちにどうぞ」 「いただきます」 焼きたてのスコーンは、明るく乾いたひなたの匂いがした。 ひんやりとしたクロテッドクリームとストロベリージャムをのせて口に運ぶ。 温度も感触もバラバラの甘みが口のなかでいっしょになる。 *引用 「火山のふもとで」 松家仁之 新潮社 より) ******* スコーンブーム、再来。 一時は、新しいレシピを見ると試さずにはいられなくて ずいぶんと沢山焼いてみたものだ。 スコーンはシンプル。 基本的に、材料は小麦粉、バター、砂糖、卵。 そして、そう、作り方といえば、 小説の台詞の通り「混ぜて焼くだけだもの」。 至って、シンプル・・・ではある。 ではあるけれど、材料の配合、混ぜ方、 もちろん、どのような小麦粉を使うかや、焼き加減などで 出来上がるスコーンの形や食感はかなり異なるので 自分好みのものにぴたりと焼き上がることは、なかなか難しい。 それでも様々なレシピを試す中で辿り着いた、 これ、というレシピで長いこと焼き続けてきたけれど 最近、もう少し、何か、と思うようになってきた。 そういうわけで、スコーンブーム、久々に到来! 今日は、切り抜いておいた新聞記事のレシピを参考に。 日本の小麦粉でも美味しく焼けるよう工夫され サワークリームを入れて、色白に焼き上げるレシピ。 外はかりっと、中はしっとり。 これは、美味しい! 混ぜて焼くだけ、でも、奥が深い。 スコーンブームはまだまだ続きそう。 (2015.10.24) |
運動会の朝。 「たのしみすぎて、たのしみです。」 なにかちょっと頑張ることがある日の朝食は、 いつだって、おむすび。 ぎゅつ、ぎゅっ、とエールを込めて。 (2015.10.16) |
金木犀が香り始め、 そろそろ?と、いつもの店を覗いたら 「たった今、届いたばかりです。」 笑いながら目の前の段ボールを開けてくださった。 こうして手にした今年初の紅玉は サンドウィッチに。 雑誌の片隅に見つけた時から、決めていた。 林檎とバタークリームのサンドウィッチ! バタークリームを練りつつ、 傍らで、薄切りにした紅玉を炒め、 グラニュー糖とシナモンをひとふり。 ライ麦パンにサンドしたら、 熱い紅茶も用意して 肌寒い秋の休日のおやつに。 直径20センチ、ほどよく深さのあるウィロウは、 この夏に購入したばかりの、新顔さん。 大きさと形、 一目見た瞬間、これはかなり使い勝手がよさそう、と直感。 ごく控えめに波打つ縁のデザインも好みだった。 古いものだったので、揃いでとはいかず二枚だけ。 せめてあと二枚あればいいけれど 同じものに出会えるかどうかは分からない。 でも、それを探し、待つのも また一興。 ウィロウをめぐる、楽しくもキケンな 終わりなき旅!? (2015.10.12)
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