Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
この秋、息子もバイオリンを始めた。 慎重派の息子、 これまで自分から何かをやりたいということなどなかったし、 こちらが提案しても首を横に振るばかり。 バイオリンもしかりで 娘が何度も誘ってはいたが、 彼は頑として拒否し続けていた。 それなのに。 それは、あまりに突然のことだった。 娘のレッスンに顔をだした際、 一緒に来ていた息子が、おもむろにリュックからノートを取り出し 何かを書き始めたのだ そして、すっと立ち上がり、先生のもとへ。 突然ノートを見せられた先生も、びっくり。 そこにはこう書かれていたのだから。 「はやく バイオリンが ひきたいな」 思えば、6年前の12月末、この世に生まれ、 病院から初めて家に戻ってきたまさにその日から 姉のバイオリンの洗礼を受けた弟であった。 「弟にきかせてあげる!」 姉は新生児の隣でギーコ、ギーコと得意顔。 そんな歓待にひるむこともなく 彼がすやすや眠り続けていたのは お腹の中で10ヶ月間、ずっと聞いていた馴染みの音だったからなのかもしれない。 少しずつ言葉を話す頃になると、 バイオリンのことを「バンミンミ」と呼んで 隙あらば、手を伸ばし、狙っていたものだった。 このごろ、娘はよくシューマンの‘トロイメライ’を弾いている。 あたたかな明かりの灯る、冬の夕暮れどきにぴったりの どこか幸せな眠りを誘うような旋律だ。 元来ピアノ曲ではあるけれど、バイオリンで奏でるのも悪くない。 「子供の情景」という作品の中のこの一曲は 懐かしい子供時代への回想から生まれたという。 とりわけ‘トロイメライ’は、「夢」という意味の通り、 ゆったり甘く、子供の夢を描いている。 毎週一回、姉弟はレッスンに行く。 私はレッスンに向かう二人を見送るのがとても好きだ。 お姉ちゃんと一緒だという揺るぎない安心感もあるのだろう、 息子はとにかく嬉しそう。 「いつか一緒に弾きたい」そんな夢が動き始めた娘もまた、 ずいぶんとはりきっている。 弾む二つの背中。 ‘トロイメライ’が夢の旋律なら、それは私にとって 夢の情景と言えるかもしれない。 だから、私はいつも見えなくなるまで見送ってしまう。 子供時代のやさしい思い出として この時間が二人の心に刻まれていきますように・・・ そんなことを願いながら。 (2015.12.29) |
今年のクリスマスクッキーは
砂糖の代わりに、モミの木の蜂蜜を使って。 メリークリスマス!
(2015.12.24) |