Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
気配がする。 やっぱり! ちらちらと舞ってきたそれは やがて勢いを増し、 みるみる街の姿を変えてゆく。 魔法をかけるように。 そんな、雪の日。 「エッフェル塔三十六景」は、 アンリ・リヴィエールの版画集。 葛飾北斎の「富嶽三十六景」のオマージュとして 制作された。 雪景色もその中の一枚だ。 魔法にかかっていく過程が感じられる 大好きな作品。 今年の冬は本当に寒さが厳しい。 今朝は雪模様となった。 夕方にはやんでいたけれど、 バス停で凍える。 「お寒い中、大変お待たせいたしました」 運転手さんからの思いがけないアナウンスに 少し、あたたまる。 人の言葉も、魔法になる。 そんなことを思いながら 雪のパリを眺めている。 (2018.2.7) |
先月、誕生日を迎えて46歳になりました。 これまでは、年を重ねることを自然に受け止め 特別な感情を抱くこともなかったけれど 46歳。 あらためて、自分の年齢を見つめてみると 随分と遠くまで... 初めてそう思わずにはいられませんでした。 「このところのふしのさんの文章からは、 離れていくものへの寂しい心持ちというようなものを感じます。」 長いことBlue Willow Journalを読んでくださっている友人から 誕生日にこのようなメッセージをいただきました。 特に意識はしていなかったのですが、 そうなのかもしれません。 昨春、娘が高校生になり、格段に在宅時間が短くなりました。 顔を合わせるのは、朝と夜だけです。 子育てに終わりはないかもしれないけれど 「子供と過ごせる時間には限りがある」ということを 今更ながらに実感しました。 それだけではありません。 40代中盤ともなれば、 出会いよりも別れ、 手に入れることよりも、手放す。 少しずつそんなことが周りに増えてきたのも現実です。 昨年、ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏は こんなことを語られていました。 氏は幼い頃に家族とともに渡英され 日本での記憶は朧げにしか残っていない。 しかし、その思い出を (思い出そのものというより、それを巡る世界観そのものを) 書き残しておきたい。 そして、書き残し、小説の中に閉じ込めることで その世界を大切に守っていきたい、と。 "It was a way of preserving a world safely inside a novel." * 「preserve」(=保つ、保存する、失われないようにする) その単語を目にした時、 次元こそ異なれど、自分もまた、そうなのだろうと感じました。 終わりがあるからこそ見えてくる、 今だけの風景、 今だけの感情を 多分、私も書き留めることで 閉じ込めておきたいと思っている。 失われていく今を、 失われないようにpreserveしようとしている。 そして、その想いが文章から滲みだしているのであれば それが46歳のありのままの私なのです。 最近の楽しみは、 中学時代からの友達が誕生日に贈ってくれた珈琲。 毎年、地元の焙煎所で豆を選んでくれます。 濃いめを、デミタスカップできゅっと一杯。 珈琲は、珈琲にしか届かない場所(心と体の)に ちゃんと届く。 今宵は、娘の作ったサラミチョコレートと・・・ * 出典は失念しましたが、 インタビュー記事を書き写していたものだっだかと思います。 (2018.2.04) |
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