Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
四月吉日 ジャムを煮る しなくてはならないことを、時間をかけずに・・・ たいていそんな毎日だから しなくてもいいことを、時間をかけて・・・ それはとても贅沢なこと。 空き瓶の煮沸消毒、あく取り、瓶詰め。 手間も嬉しい、 ただ愉しみのためだけのジャム作り。 いつでもどこでも美味しいジャムが手に入る今だけど、 部屋いっぱいに広がる甘い香りと えも言われぬルビー色は ホームメイドならでは。 それに・・・ できたてを、スプーンでひとすくい。 まだ熱いジャムは、とろりと芳醇で ジャムというより、 なにか別の特別なデザートのよう。 翌日のジャムは、 英国ティータイムの定番 VICTORIA SANDWICHにサンドして。 (2018.4.15) |
半年ぶりに、通勤の足をバスから自転車に変えた。 気候がよい時期は、気持ちよいことこの上ない。 春休み。 学童に行く息子と並んで 小学校までは自転車を押して歩く。 朝の通学路は閑か。 瑞々しいうぐいすの鳴き声だけが 空気をふるわせ、ついてくる。 夕方から雨になるでしょう。 そんな予報が気になりながらも 今日もまた、自転車の誘惑に負けてしまった。 そして案の定、帰り道に雨に遭う。 オフィスを出る頃は、そろそろ・・・の空模様だったのが ほつり、ほつり。 自宅に着く頃には、いよいよ本格的に降り始めた。 リビングでは部活を終えた娘が 春休みの宿題をテーブルいっぱいに広げたまま その上につっぷして寝ていた。 珈琲を淹れて、窓を開ける。 世話らしいことは何もしないのに、 今年もまたカリンが咲いてくれた。 春雨に濡れそぼる花々を見上げて ゆっくり珈琲を飲む。 雨が大地にしみ込むように、 珈琲が全身にしみわたっていく。 この感覚が、たまらない。 「あ、珈琲と雨のにおいがする」 背後の声に振り返ると 娘が寝ぼけ眼をこすっている。 この春から高校二年生。 彼女も最近、珈琲を好むようになった。 「珈琲と・・・雨?」 「うん、土のにおい。雨が降ってきたときの。」 「なるほど」 「落ち着くなあ・・・」 「落ち着くねえ・・・」 雨は音もなく降り続いている。 土のにおいは濃厚に、珈琲のそれは少しずつ薄れゆき 息子の帰宅によりじきに破られるであろう静寂を ふたりただ聴いている。 (2018.4.02) |
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