Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
東京からの新幹線が駅に着いたのは、 日付が変わる5分前。 自宅までのタクシーでは 小さくカーペンターズが流れていた。 「あ、カーペンターズ」 「だね」 着膨れたコートの上に、お土産の荷物を抱えて なんとなく口にする。 カレンの歌声は、いつだって少し、寂しい。 すでに夜も更けていたので シャワーですませてもよかったけれど 湯船につかりたい気がして、お湯を張った。 くたびれていたし、寒くもあった。 でも、それ以上に、この二日で見聞きし、 感じたたくさんのことを あたたかい湯気の中で ひとつひとつ解いてみたくあった。 「出してあげるの?」 友達が聞いてきた。 ほんの数時間前のこと。 六本木の国立新美術館で再会を果たした私たちは その後、クリスマスイルミネーションが始まったばかりの 街を歩き始めていた。 出して、というのは 進学の為に子供を自宅から出すということ。 学生時代に出会った私たちも それぞれ子供達の進学を考える頃となり 話題もそのようなことが増えてきた。 「・・・だって。ねえ」 そもそも、今回の上京は娘の表彰式のためだった。 彼女が好きな分野で認められ 賞をいただけるのは 親としてもこの上なく嬉しいことだ もし、これから彼女が目指して歩く道が 「出る」ところで拓けていく可能性があるのならば できる限り応援したい。 それは紛れもなく本心で、一番大きな思いに違いない。 でも、その大きな思いのまわりに さまざまな感情がひしめきあっていることも また、事実なのだ。 ・・・だって、ねえ。 湯気にくるまれて、友の顔を思い浮かべる。 私たちだって18歳で家を出て、 大学で出会ったんだもんね。 享受してきたものの大きさは 自分たちが一番よく分かっている。 分かっているんだけどね。 ふと、タクシーのカーペンターズが蘇ってきた。 カーペンターズを知ったのは、父の部屋だ。 まだ、幼稚園児か、小学生低学年の頃だったが LP版レコードは今もあるだろう。 大学は絶対、外に出る、と 家を離れた18歳の頃、 快くその機会を与えてくれた親の気持ちなど 深く考えたことなどなかったかもしれないなあ。 カレンの歌声は、いつだって少し、寂しい。 おみやげに買ってきたショコラのシュトーレンで 少しずつ、我が家もクリスマスの気分。 (2018..12.8) 美術館の中庭に出ると 風は冷たく澄んで 秋の終わりのバラが一輪、揺れていた。 見上げると ロンドンにいるような気分に。 19世紀に建てられた美術館の設計は 英国人建築家ジョサイア・コンドルによるもの。 「イギリス積み」と呼ばれる合理的で丈夫な煉瓦の積み方が 特徴だという。 私は煉瓦造りの建物が好きだ。 ミュージアムショップでは ポストカードとともに、 煉瓦モチーフの手ぬぐいを買った。 東京 丸の内 三菱一号館美術館にて (私が訪れた時は、ミュージアムショップには ブルーウィロウのティータオルやマグカップも置いてありました!) (2018.11.23) |