Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
息子、小学5年生。 始まったばかりの新学期も、ふたたび休校。 みんな同じだって分かっていても、 なーんだか調子上がらないのも、解る。 せめてケーキでも焼きましょか。 休校時の宿題は出るけれど 学校からのプリントを 一方的にこなすのも飽きちゃうよね。 今朝の新聞に ソーシャルディスタンスの記事が載っていたから おやつ食べたら、 一緒に読んでみよう。 今は対人距離を取ることが大事だから マクドナルドやコカコーラも 広告で商標の文字間を大きく空けて そのことを訴えているんだって。 ほら、マックのMの文字が ふたつにわかれてる。 これもソーシャルディスタンス? みんながそれぞれに、いろんな視点で 工夫しているんだね。 へえ。なるほど。他にはどんな考えがあるかな。 しばし、なかなか有意義(だと思っていた)な時間を送った後、 「あとは漢字の練習をしておいてね。」 私は、言い残してキッチンに向かった。 そして、 ・・・そろそろ出来たかな? と、覗いた漢字練習ノートには 文 字 間 を 思 い き り あ け て 最 小 の 労 力 で 終 わ ら せ た ス ッ カ ス カ の ペ ー ジ が ! ! そこ、空けるところじゃないでしょ! (2020.04.22) 週末のスーパーマーケットは 明らかにこれまでと異なっていた。 緊張感が漂う中、 皆、静かに間隔をあけてレジを待つ列をつくっている。 手早く商品をカゴに入れ 列に加わろうとしたそのとき、 「金時豆」が目に留まった。 瞬時に、思い出がふわっと蘇ってきて 迷わず、カゴに放りこんだ。 金時豆の甘煮は、 高校生の頃、よく母に作ってもらっていた。 体型が気になるけれど、甘いものも食べたい! そんなお年頃のワガママに応えて お菓子の代わりに作ってくれていたというわけだ。 すでに煮上がった市販品では甘さが調節できないからと 豆を戻すところから、手間をかけてくれた。 ほっくりと煮上がった金時豆は 甘さもほどよく、 お菓子ほどには、罪悪感もなし。 悩めるティンエイジャーの救世主だったのだけど、 結局たくさん食べてしまって 妹に笑われていたっけ。 たっぷりの水に浸したあと、 ことこと、ことこと 豆を煮る。 「家にいなくてはいけません、って 家に帰ってはいけません、に比べたら十分幸せよね」 先刻、電話で話した妹の言葉がまだ耳に残っている。 東京の病院で医師として働いている彼女の言葉だからこそ それは響いた。 家にいるくらい、なんともない。 何度も、何度も、丁寧に灰汁をすくった。 完成! ただ、煮るだけなのに 皮がはがれたり、固さにムラがあったり 案外、難しい。 でも口にすると、求めていたあの味で 気持ちも少うし、ほぐれたような。 (2020.4.19) 庭のカリンが満開になった週末。 届いた新聞の写真に頬が緩む。 自宅学習中の女の子と、彼女を見守る猫ちゃん。 大きな闇の中にいるからこそ、 小さな光に、より気がつくことができるようになった。 国境は封鎖され、世界が分断されていても 願いはひとつ。 そして、皆がそれぞれの場所で、 自分にできることを考えている。 さまざまな工夫と思いやりが あちらこちらで咲いている、春。 (2020.4.05) |