Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
この階段を上って、はじめてレッスンに伺った日のことを 私もよく覚えています。 娘がバイオリンをはじめた、小学1年生の秋のこと。 バイオリンを習ってみたいという彼女のために 車を飛ばして、遠方の大きな教室に見学に行ったのち、 ふと、近所に見つけたバイオリン教室は 当時暮らしていたマンションから(現在の家からも) 子供の足で徒歩5分ほど。 私の両親と同世代の先生がご自宅で教えていらっしゃる 小さな教室でした。 あの日から16年。 もし、この先生とのご縁がなければ これほどバイオリンを好きになり、 こんなに長く続けてこれなかったかもしれません。 大學入試と就職活動の時期以外、 ずっと上り続けたこの階段。 そんな教室の最後の発表会が、先日、終わりました。 a 最後の発表会のあと、 昔からご一緒させていただいてきたお姉さんが 「小さい頃、本当に楽しそうにバイオリンを弾いていた姿が忘れられないよ」 少し涙ぐみながら、そう声をかけてくださいました。 この写真は、ちょうどその頃の発表会のあとに撮ったものです。 「ここに帰ってきたときには、また一緒に弾こう!」 そう声をかけてくださる方もいらっしゃいました。 バイオリンが紡いでくれたこのようなご縁もまた、 私たち親子にとって、かけがえのないものでした。 バイオリンケースを背負って 階段を上る少女の絵。 一枚目の写真の絵は、数年前に娘が描いたものです。 先生はとても気にいってくださり 発表会の際には、ロビーにも置いてくださるほどでした。 これまで何人の人たちが この階段を上って、バイオリンを奏でてきたのでしょう。 日々の練習は、ひたすらに地道。 でも、その先にある音楽や自分との出会いは 心ふるえる喜びと発見につながっている。 娘によると、 そのような思いをそれぞれに抱くたくさんの人たちの背中を レッスンに向かう少女に託して描いたとのことでした。 最後のレッスンの日、 先生は、贈り物の包みを手渡してくださいました。 それは、ガラスの砂時計! さらさらと、きらきらと 砂は落ちてゆきます。 その美しく、よどみのないこと。 そして、次に会う時のための嬉しい宿題も! 娘が大好きなバッハの 「2つのバイオリンのための協奏曲 二短調」 お互いが練習をしておいて 再会時には合わせましょう、と。 「あなたがファーストね」 先生の一言で、さよならの名残惜しさが 未来への楽しみに変わり それは、新しい時の砂がまた落ち始めた瞬間でした。 (2023.10.28) |
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