Blue willow のある食卓
    ーEveryday with Bluewillowーー









    お江戸紀行(4)













    旅の最後の目的は
    一人暮らし一年目の娘の住まいを訪ねること。
    「二口コンロは譲れない」という条件で探した物件は
    ちょっと駅から遠いけれど
    「運動不足解消にちょうどいいよ」と
    軽やかに自転車を漕ぎ、
    「ふぞろいパプリカ袋いっぱいを100円で売ってくれる、最高!」な
    馴染みの八百屋に通い、
    「今は弾けないけれど、落ち着いたらきっと。」と
    バイオリンの楽譜を本棚に飾って。
    晴れた日には遠くに富士山を望める小さな部屋は
    すっかり彼女の城となっていた。





    思い出す。
    ちょうど昨年の今ごろから春まで、
    私はとにかく悲しくて仕方がなかった。
    自らの夢を叶えて娘が巣立っていくことは
    誇らしく、心から嬉しいことなのに

    同時に、寂しくて仕方ない。
    現実感も湧かない。
    娘の旅立ちまで、あと3ヶ月、6週間、5日・・・
    いつも数えては、ひっそり涙していたりした。
    あれから約一年。





    寂しさがないわけではない。
    それでも
    社会の中で揉まれながら
    自分の足で歩き始めた姿を見る喜びは
    その気持ちを何倍も上回る。
    仕事の話を聞いたり、
    関わったデザインが製品となって世にでることが
    今の私の大きな喜びだ。
    一社会人として、励まされもしている。



















    旅の途中、麻布で一緒に買った焼き菓子は
    おみやげの中で一番最後に美味しくいただいた。
    濃いコーヒーを淹れて。
    むす娘も私も、コーヒーと、
    コーヒーに合う焼き菓子が大好きだ。
    甘い焼き菓子は、
    苦いコーヒーがあるから美味しさが際だつし
    その逆も然り。
    どちらかが欠けたら、味わいはぐんと減ってしまう。
    きっと、人生も同じ。
    ビターあり、スイートあり。
    どちらもあるから、味わい深い。
    めそめそしていた一年前の自分があって、
    今ここに、それをも含めた歓びがある。
    我らの人生の(あるいはコーヒーと焼き菓子をめぐる)旅は、
    まだまだ続く。