Blue willow のある食卓 vol.5
どんなものと合わせても
いつも新鮮な驚きをくれるブルーウィロウ。
はっとさせられる瞬間を
暮らしの中から切りとって。
しめった風が吹き抜けて、
青々と茂る草の匂いが、より一層濃厚になる。 「濃い」と思う。 ここは匂いも、色も、形も、音も、本当に全てが濃い。 住まいのある町から、車でほんの一時間。 けれども、夏の「濃さ」が圧倒的で、暑さの質もまるきり違う。 もちろん夏に限らず、四季それぞれ ここにある全て、 その存在感はみっちりと濃い。 「こんな場所で育って どうして君がデザイナーになろうとしたのか分からない」 以前、都市で働いていた万蔵氏が同僚をこの地に連れて来た時、 そう同僚は言ったという。 長い間、それは私達の間で笑い話となるエピソードだったけれど 今の私なら 分かる気がするのだ。 新しいものを創り出す仕事と、時間の止まったようなこの場所とは、 一見、対極にあるものにも見える。 けれども、ここには、物そのものの姿が在る。 色や形はストレートで多彩。 生命力に溢れた天然のデザインは 見る者のイマジネーションを刺激し、 美しい形への憧れを育むに違いない、と。 「この子が将来、どんな環境の中で生きてゆくにしても・・・」 帰りの車、娘は野花を手にぐっすりと眠っている。 お昼寝も忘れて、ずっと遊び続けていた彼女。 「・・こんな夏を知っているのは、しあわせなことだよね」 何かを介するのではなく、蝉の声は蝉の声として、 雲の形は雲の形として、トマトの赤はトマトの赤として、 自然の音を、形を、色を、そのまま夏の記憶に刻みこんで欲しい。 山を下った所で、一台のバスとすれ違った。 その昔、今となにひとつ変わらないこの緑の山をくだり、 彼はバスと電車を乗り継いで、絵を習いに通っていたという。 この景色に包まれて、遙か未来を描いていた少年の彼、 もし叶うなら、会って話しがしてみたい気がする。 なんて思いながら、私もそっと目を閉じた。
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