英国小景



     
     


    あの日、あの時、あの瞬間。
    風景を構成していた全てのものが、
    時と場所をとび越えて、
    目の前に現れた気持ちになった。
    光、色彩、音、匂い
    そういった風景のトーンまるごと。

    「思い出すね」
    「うん、思い出す」
    何度もそう繰り返し 木立を仰ぐけれど
    それは アルバムをめくりながらの‘思い出す’とは
    全然 違う。
    なにしろ思い出しているのは、頭ではなく、体なのだ。
    頭のてっぺんから足の先まで
    全身全霊、自分の存在自体が
    風景に反応している。
    思い出す、というに、それは全然足りなくて
    それでも、それ以外にちょうどいい言葉がみつからないから
    ため息まじりに もう一度つぶやく。
    「思い出すね」

    昼下がりの公園で。
    私達は、紛れもなくあの秋のウィンザーを呼吸している。


    Windsor Park 2001  


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