英国小景
句読点のような
日頃から なにかにつけ、
手紙というものを書きたくなる性分だが、
旅先でもそれは変わらない。
一日の終わり、
宿の部屋に落ち着き、ペンをとる。
それは静かで、満ち足りた時間だ。
旅の途中で求めた絵はがきのささやかなスペース分だけ、
今日という一日を振り返り、
言葉を選んで、文を紡ぐ。
思うに、手紙を書くということは
句読点のようなものなのかもしれない。
目新しいことの洪水に飲まれそうになる旅先なら
なおのこと。
だらだらと流れにまかせてしまわないために、
一呼吸ついて
また、新しい朝を迎えるための
句読点のようなもの。
そうやって 私の旅は続く。
書くことで句読点をうちながら
毎日は続いてゆく、
自分への手紙も、
旅先であれ、日常であれ
もちろん、ときどき書き送る。
Bath 1994