冬時間
カフェと孤独と
人一倍寂しがりやだけれど 一人も好きだ。
好きというよりは
一人の時間は必要不可欠。
それなしではバランスよく生きてけない。
だから、これを見つけた時 手に取らずにはいられなかった。
「私の好きな孤独」
好きな、というくらいだから
きっとネガティブな孤独ではなく
もっと好ましい孤独の本だろう、そう思った。
詩人 長田 弘さんのエッセイ集。
実際は、両種類の孤独もろもろがいっぱいつまっていた。
特に印象深かったのは
カフェのシーンがいくつか出てきたこと。
いつもの町で、旅先の町で、
一杯のコーヒーと一人で過ごす時間。
なるほど 紅茶はお菓子でもつまみながら
おしゃべりのつれづれに、が楽しいが
コーヒーがしみじみ美味しいのは一人の時で
カフェは大勢の人に囲まれてはいるが
誰も邪魔はしないし 一人を保てる
都合よくも心地よい孤独を楽しめる場所かもしれない。
北アメリカの町の朝のカフェの描写は魅惑的だ。
明るい光、天井が高い店内、
やわらかなコーヒーと固い椅子
ドーナツやワッフルといった朝にふさわしいケーキ、
まだ活字の匂いがする分厚い新聞、
そして長く伸びて揺れる 舗道に立つ人の影・・・
‘朝のカフェに声高な言葉はおおよそふさわしくない。
朝のカフェは 清潔な孤独を めいめいが静かにじぶんに
確かめるべき場所だ’
清潔な孤独!
なんてこった、
こんな言葉はやはりひとりじめしたい。
‘角を曲がる。
すると そこにさりげなくていい店が
きっと平凡な奇跡のように開いている’
平凡な奇跡!!
たまらなくなって 私はコーヒーを入れる。
いつのときもコーヒーはひとりが一番美味しい。
願わくば 寡黙で雄弁なこんな言葉をかたわらに・・・