女同士
こんな日もたまにくる。
旦那さまを見送り、洗濯機を回して
朝刊もすっかり読み終えたのに
体も気持ちもおっくうな朝。
そっと寝室を覗く。
ベッドが二つ(私達のと、彼女のと)
小さなキャビネット(好きな本しか入っていない)
そしてドレッサー(右上には額装した宝物のポスターがかけてある)
まったくこの部屋には気持ちの良いものしかない。
そして 狭い。
けれどもその窮屈具合がまたいい。
好きなものばかり集めてきた 秘密基地みたい。
ベビーベッドで彼女はひとり、
目をあけて遊んでいた。
そっと抱き上げて、私達のベッドに降ろしてあげる。
大きなシーツの海に、ぽつんとちびちゃん。
かなり好きな構図。
とてもかわいらしいもの。
そして私も海に乗り込んで
広々したシーツの上でゆったりおむつを替える。
ちらと時計を見る。
「今ごろ、パパは会社に着いたね」
窓の外でランドセルの揺れる音がする。
「おとなりさんは学校かあ」
でも、私達はいいね。
忙しいお仕事も、難しい算数も
ここにはないもの。
渋滞に巻き込まれることもないし
寒い道を歩かなくてもいい。
毛布のあたたかな誘惑に
体がふわあっと弛緩。
おむつのシールを止めながら、
ぐっと覗き込んで 提案する。
「ママも一緒に寝よっかな!」
だって ここは秘密基地。
あまり陽も入らないから
朝だということを 忘れていられるでしょう。
向き合っていた彼女が
絶妙のタイミングでにやり、と笑った。
洗濯機の中では脱水も終わった洗濯物が
冷たく固まっているだろう。
もう 私はゆめごこち。
こんな日もたまにはいい。
*******
先日、誕生日を迎え、
たくさんの「お誕生日おめでとう」をもらいましたが
これまで 当たり前のように受け止めてきたこの言葉が
今年ほど胸に響いたことはありませんでした。
いや、これまではその意味の大きさに
思いを巡らせたことなどなかったのかもしれません。
誕生日はたった1日です。
けれども 1人の人間が誕生の日を迎えるのに
どれほどの時間と どれほどの想いがあるのかを肌で知ったから
今年の「おめでとう」はずっしり重かったのです。
「誕生日おめでとう」とは 1日の為だけの言葉ではないのでしょう。
だから しっかり「おめでとう」を受け止めて
きっちり「ありがとう」を伝えよう。
重ねてもらった時間と想いの上に
今の私があるのだから、
そんな風に思ったのでした。
さあ、いよいよ30代。
旦那さまと娘、
二人の仲間と共に
旅はまだはじまったばかり。
明日はどっちだ?
(2002.1.22)