冬時間
朝のごちそう
ずっと昔、とびきりのそれを味わったことがあるのか、
あるいは、もしかすると
どこかで印象的な記述を読んだことがあるだけなのか、
今となっては分からないけれど
私の舌と頭は、その美味しさをはっきりと覚えていて
その存在は ずっと特別な位置にある。
バタートースト。
シンプルにして、とても満ち足りた、
幸福な朝のイメージがするところもたまらなく好きだ。
しかして、私はそれを探し続けるのだけれど
これがなかなか難しい。
あちこちのパン屋に足を運んだり、
いかにも美味しく焼けそうな
銀色に光るクロームのトースターだって買ってみた。
でも、ちょっと違う。
パンの甘さ、バターの塩気、
それから焼き具合。
妄想ばかりが膨らみすぎて
いつも なにかしら物足りない。
記憶の、あるいはイメージの中のバタートーストには
いつも どこか届かない。
キャンプの朝、
バタートーストを食べた。
そういうことに疎い私は まったくもって初めて知ったのだけど
屋外用のトースターというものがあり、
それを直に火にかけて、ゆっくりゆっくりパンを焼き上げてゆく。
これは素晴らしかった!
ざっくりと厚切りにした手作りパンは
表面はさくっと香ばしく、中はしっとり。
こんがりとした焼き色に
たっぷりと惜しみなく塗ったバターがとけ込んでゆく、
これだ、この味、この姿。
朝露にしっとりとした芝を踏みしめ、
清冽な空気の中で頬張るバタートーストは
限りなく記憶の、あるいはイメージに近い、
朝のごちそうだった。
Good Good Morning!
and good evening・・・
(2003.10.5)