冬時間
あなたが見ているもの
ーあるいは 最近の私のことー
ひとりでいい子にしているな、と覗いてみると
あなたはよく部屋の隅や、白い壁を眺めているね。
私には何も特別なものは見えなくて、
それはただの部屋の隅や壁なのだけれど
あなたはそれを見ながら楽しそうに笑ったり
興味深そうにしていたりするから
きっと 何かが見えているのでしょう。
あなたにとっては面白いものがあるのでしょう。
そんな時 私は
あなたは私から産まれてきたのだけれど
生まれ落ちたその瞬間から
あなた自身のその目でちゃんと世界を見てるのよね、と
当たり前のこのことを とても頼もしく思うのです。
私は自分の目に映ったものを 文章にすることが好きです。
心を動かされたことから、日常のささいなシーンまで
アルバムに写真を貼るように 書き綴っていくの。
そして、このごろの私は これまでに増して
書きたいことが沢山です。
あなたが家族の一員になって 忙しい毎日だけれど
残しておきたい気持ちや風景やどんどん、どんどん押し寄せてきて
それを書かずにはいられない。
成長が早いあなたを間近で見ているから
「今」という時間をちゃんと残しておきたいって思うのかしらね。
今見えているものも
時と共に見えなくなっちゃうことだってあるから
今のうちに書いておきたいのかもしれないね。
日々はただ流れていって、きっとその多くを私達は忘れてしまう。
暮らしてゆく、ってそういうことだから それはそれでいいのよ。
けれども、忘れてしまうにはもったいないことも沢山あるから、
今、でなければ書けないことも沢山あるから、
だから、私は書いているの。
私に見えるものを書き続けているの。
あなたに見えて私に見えないもの、があるように
私に見えてあなたに見えないものも
この先きっとあるでしょう。
ひとりひとり、目に映るものは違うもの。
心に留まるものは違うもの。
だから これはお互いさまだよ。
ただ ひとつ。
あなたが見ているものは あなたが大切にしなくちゃね。
たとえそれが私には見えなくとも
その尊さは分かってあげたいと
私は思っています。
(2002.2.20)