午前6時半の葛藤
-on her first birthday-
朝、6時半、
まだ薄暗いこの時間でさえ
早起きカラスは お出かけの時間のよう。
窓の外で、遠く近く、その鳴き声が聞こえます。
「ねえ、みてみて、カラスさんだよ!」
そんな時、最近の私は
まだ夢の中にいる娘を起こしたい衝動にかられます。
カラスは今、娘にとって特別な存在。
日々の散歩の途中、
巣に帰りゆくカラスを見かける度に
「カラスさんだね。」
ベビーカーを止めて、そう空を見上げていたら
いつしかカラスを見かけると
それが 実物であれ、
テレビや絵本の中であれ、
また 姿はなくとも、‘カラス’という言葉が耳に入っただけで
娘は「カア カア」とその鳴き声を真似るようになりました。
少し驚いたような、また、どこか嬉しそうな顔をして
カラスを指さしながら
「カア カア」。
誰に言うでなく、自分に確かめるような神妙さで
「カア カア」。
生まれて1年、
今、彼女の中では 身の回りのもの全てが
おそらくすごい勢いでもって
その存在の輪郭をはっきりと表しはじめたのでしょう。
色、形、音、そして言葉。
全てのものに それぞれを表すそれぞれがあること。
その不思議と興奮に、時に身を固くし
また時に身を乗り出す娘の姿を目の当たりにすると
今、自分があたりまえのように見ているこの世界が
この小さな目に、心に、どんな風に映っているのだろう、と
思わずにはいられません。
カラスはその姿も、鳴き声もとりわけ美しいわけでなく
実際これまで その存在など
気にかけたことなどありませんでした。
どちらかというとマイナスイメージの多かった鳥でもあります。
けれども、それは1歳を迎えたばかりの娘にとって
特別な鳥。
くっきりとした黒い色と形、
はっきりとした鳴き声と名前、
このモノトーンの鳥が
今まさに 娘にとって
たくさんの色や音に満ちたこれからの世界への橋渡しであるとするならば
その存在もまた、嬉しく感じる親心なのです。
お誕生日の朝。
窓の外では 早起きカラスの鳴き声がします。
娘が起きてきたら、てんやわんやの朝食がはじまるので
このまま1人で朝の用事をスムーズに済ませたい。
でも、朝一番、
明けゆく東の空に
切り絵のようにくっきり飛びゆくカラスを見せてあげたい。
今日もまた、午前6時半。
そんな葛藤の中、
私の一日がはじまるのです。
ーお誕生日の1日は
お祝いにいただいたお洋服みたく
Happyのパッチワークで!ー
+きりっと晴れわたり、冷たい空気が気持ちよい朝。
窓を開け放ち、新鮮な空気の中で掃除。
掃除機の音がこわくて泣いてしまう娘にとっても
嬉しい朝だった・・・かな。
バースデーコールで
二度も掃除機が中断されたからね+
+心のこもったおめでとうのメッセージを
何度も読み返し
一年前の写真を眺めてしばし+
+色づいた落ち葉のコラージュ!
お友達のお姉ちゃん達から
こんな素敵なプレゼント。
早速、ドレッサーの特等席に+
+最近 とにかく動物が気になって仕方ない娘。
お祝いに焼いたキャロットケーキの上に
どうぶつビスケットを並べてみました。
カラスのビスケットはありませんが、
プレゼントした絵本の中の一冊は
カラスが登場するものを選んで。+
+もうひとつの贈り物は、鉄琴。
まだ彼女がお腹にいる頃に
夫婦で衝動買いしてしまったもので
澄んだ美しい音色がします。
1年以上も、押入に眠っていてもらいましたが
ようやく日の目を+
あなたの しらべを きかせてね!
(2002.11.13)