冬時間
閉じ込めたい!
趣味は?と尋ねられて、
さすがにそれとは答えられないけれど
‘額装’は ほとんど趣味と言ってもいいかもしれない、と思う。
履歴書に書けないたぐいの、趣味。
玄関には ルソーの版画を、
鏡台の横には 彫刻展のポスターを、
リビングには 古いイギリスの地図を、
キッチンには スプーンや角砂糖のコラージュを、
それぞれ 額に入れて飾っている。
額で囲む、
という特別感がたまらない。
額に入れることによって、
それを守りたい、と想うこちらの気持ちまでもが封じ込められたようで
より一層、その絵を大切に感じる。
額装しようと思うほどの物は、その時点で特別なわけだけれど
実際に額に入れることで、それは更に高まるというわけだ。
久しぶりに画材屋に行き、
額装用のマットを選んだ。
今回 閉じ込めるのは、望月通陽氏の描いた
ワーズワースの詩「Resolution and Independence」の題字と絵。
2月に訪れた染め文字展で きゅん、となった。
実のところ 閉じ込めたのは
展示されていた作品ではなく 個展案内の絵葉書なのだけれど
それでも、作品の素朴な美しさは損なわれることない。
ギャラリーのオーナーが書いていらっしゃる通り、
それは‘とても温かい字’。
背景のグレイさえ、決して重たい印象ではなく
さらり、とした質感をたたえている。
サンプルの中から
迷い、相談し、また迷い、決め、
いや 待てよ、と心乱され
最後に 振り切るように選んだのは
シンプルな線のみで描かれた作品を包み込むような
ごく薄いクリーム色のマット。
額まで作る時は 選ぶという楽しい悩みは二倍となるわけだけれど
幸いというべきか 今回はマットのみ。
額は独身時代から使っている物を使うことにした。
裏が壊れかけているのだけれど
すっきりとした木枠が この作風と似合っているような気がしたのだ。
こうして 閉じ込められた絵葉書は
羊の置物(我が家には 人口の4倍ほど羊が住んでいる!)
ぽってりとしたピッチャー(5回目の結婚記念に倉敷にて購入)を仲間とし
書棚の上に飾られている。
(2004.4.10)