冬時間
満たし、満たされる
日曜日、
スーパーマーケットまで自転車を走らせる。
肉に魚に野菜と回り
みりんもそろそろきれそうだったな。
そうそう、来週は娘の友達が遊びに来るっていっていた。
お菓子の棚を行き来して、
息子のたまごボーロも買い足そうかと手が伸びる。
なんてことのない
日々の食材の買い出し。
買い物袋は重く、気持ちは軽い。
ちょうど一年前、
妊娠中で体調が思わしくなくなかった私は
検診以外の外出を禁じられてしまった。
安静生活の初期の頃、
どこへも一緒に行ってあげることのできない娘に
言ったことがある。
「来年は一緒に出かけようね。どこに行きたい?」
娘がためらいもなく挙げたのが
近所のスーパーマーケットの名前だったから
拍子抜け。
ちょっとお洒落でもして、買い物や食事を楽しむ
いわゆる‘おでかけ’を考えていた私は
「そんなとこでいいの!?」
しばらく笑いが止まらなかった。
でも、二ヶ月、三ヶ月、・・・
安静生活が長くなるにつれて
私が切望してきたのは
他でもない、「そんなとこ」だった。
ただひたすらに
いつものスーパーマーケットで
日々の買い物がしたい。
洋服や雑貨ではなく、
お豆腐や挽肉の買い物に焦がれるその情熱は
我ながら可笑しかったけれど
自分の目と手で
献立を考え、食材を選び、食事を用意する。
それができない毎日なんて
何か根本的なものを奪われているような気がしてならないのだった。
週明けの雨は、涼しさを通り越し寒さを連れて来た。
何かあたたかいものを作ろう・・・
鰹節をたっぷりお鍋に入れる。
お出汁のにおいに、
部屋がふくよかに満ちてゆく。
自分の目と手で
そうやって 日々を満たしていく。
(2010.10.24)