冬時間
うしろ姿
初夏、補助輪なしの自転車に乗れるようになった娘は
夏の盛りには、マンションの敷地や公園を卒業し
自分の目指す目的地まで
自らが自転車を漕いで行くようになりました。
例えばプールに、スーパーに、バレエのお稽古に。
そのうしろ姿は、
健気なまでに 一生懸命。
まだまだ若葉マーク、
膨らむシャツの背中からは
余分な力が入っているのがありありと伺えます。
それでもしっかりとハンドルを握りしめ、
一心にペダルを漕ぐ姿は逞しく、
こぼれる笑顔は、緊張気味ながらも
誇らしげです。
自転車を買って、
やわらかな髪のにおいを感じながら 前乗せに走った頃。
重くなってきて、後ろ乗せにすると
時に 思わぬ動きをしたり
疲れて寝込んでしまう娘に
必死にバランスをとることも多かったっけ。
そして、二台で共に走る今。
また一つ、成長の歓びと切なさとを
感じずにはいられません。
力の入った小さな背中が、
この夏の思い出。
秋がくれば 娘も6歳。
これからは、背中を見守り、見送ることも
随分と増えていくのでしょう。
夏の写真を整理していると
気のせいか、うしろ姿のものが目について
しばし手が止まってしまうのでした。
後ろ姿の一枚をカードにして送ると
「後ろ姿が、あなたの子供の頃によく似ていました。」
そんな返事が母から返ってきたのでした。
それもまた、夏の思い出。
(2007.8.16)