冬時間
とある午後、
吉備津神社を訪れました。
スクールのお迎えが、3時。
帰宅して、おやつを食べ、お着替えをして出発は、4時。
車を走らせ 町を抜け、
およそ4時半にはこの空間。
不思議なトリップ感です。
桃太郎の基となる伝説の伝わるこの神社は
本殿の屋根は珍しい吉備津創り。
国宝にも指定されており、
休日や行事の折は、かなりの賑わいです。
ところが 平日の今日は
ほとんど人影もなく、閑か。
長い廻廊には午後の陽射しが
ひっそりと影をつくっていました。
ここを歩いていて思い出したのは、
ひと月をCambridgeで過ごした90年の夏のこと。
大学内の英語学校に通っていたのですが
実際のところ、授業は午前中のみ。
長い午後をもてあまし、
よくCambridgeからバスで行ける範囲の小さな町を
ふらりと訪ねていたものでした。
その町の名前のほとんどを、今はもう覚えていません。
ただ、猛スピードで木立の中を駆けぬけたバスが連れていってくれた先で
(木の枝が 二階席の窓にバシバシあたるのですから!)
気儘に歩き回った果てに、
よく町の教会に入って、ぼんやりと座っていたのです。
そう、ほとんど人もいないような
今日みたいな平日の午後に。
あの時の感覚を、ふと思い出したのです。
静かで、ひんやりして、
長い長い時の流れが染みついた場所にいて
どこかとても遠くにいるような
夢の現実の狭間にいるような
そんな感覚を。
境内では池のほとりに
一人の女性が佇んでいらっしゃいました。
静寂の中、
娘がしばらく鯉に歓声をあげていたので
立ち去る時に、「おさわがせしました」と声をかけると
やわらかい笑みを返してくださり
それが、教会でぎこちなくHelloやGood Byeを告げた私への
老人の表情とどこか重なってみえるような気もしました。
この神社を訪れた目的は、
お守りをいただいてくることでした。
無事に手にした後は、
少しほっとして お財布の紐が緩くなる私です。
娘にも 桃の形のお守りを購入して家路に。
ハンドルを握りながら、
今、願いがかなうなら
名前も忘れてしまい、写真の一枚も残らない
あの小さな町に行ってみたい・・・
そんなことを考えているのでした。
(2007.6.06)