冬時間
タワーサイドメモリー
‘霧雨に誘われて、タワーサイドに出れば’
そんなフレーズで始まる神戸が舞台の曲、
「タワーサイドメモリー」
それが収録されたユーミンのアルバムを
繰り返し、繰り返し、聞いていたのは
中学二年の春だ。
週末は神戸に、と気持ちが高まるにつれ
久しぶりに このアルバムが聞きたくなって
レンタルショップに走った。
食事の支度をしながら、
洗濯物を干しながら、
娘の戯れにつきあいながら、
懐かしい曲達に導かれ
少しずつ、少しずつ 神戸に近づいてゆく一週間。
そして、いざ!
タワーサイドにとったホテルから
行き交う船と、白く伸びる航跡を望む。
ふらふらと港付近を散策していて
旅の開放感からか、
店先にかかる夏のブラウスを衝動買いしてしまった。
黒×白のギンガムチェック。
ホテルに戻るなり さっそく着てみる。
うん、うん 良い感じ。
真新しいブラウスを着たままデッキに出ると
ノースリーブではまだ少し肌寒く
頻繁に色を変える観覧車のイルミネーションと
鼻をくすぐる汐の香りが
そっと旅情をくすぐっていった。
ギンガムチェックは、少し神戸に似ているかもしれない。
どことなくレトロなのに、
見るたびにはっとするほど新鮮なところ。
お洒落ごころを、さらりと羽織っているところ。
風を感じる軽やかなところ。
新しいギンガムのブラウスに袖を通しながら そう思ったりする。
そういえば、「タワーサイドメモリー」を聞いていた中二の春にも
ギンガムチェックのシャツを着ていたっけ。
赤×白で、襟の形や合わせて着ていたスカートも
よく覚えている。
あがってきた旅の写真を前に、
また少し違った気持ちでユーミンに耳を傾けながら
ギンガムと共にある私のタワーサイドメモリーズを
アルバムにしまいこむ梅雨の一日。
(2004.6.10)