冬時間
おかあさん
うすぼんやりとした日差しが
カーテンを通して 頼りなく部屋に届く午後。
ほてった体を横たえて
おもてで響く 子供達の歓声を子守歌に
うつら、うつら、と熱の波に乗る。
同じく熱を出している娘が
時折、「ママ、ママ」と
うなされては 私を呼ぶ。
手を握ってやると
そのまま又、眠りに落ちてゆく。
心細いとき、心許ない時
私もいつも
「おかあさ〜ん」と泣いていたように思う。
口に出して、心の中で
まず 母を呼んだような気がする。
幼い頃だけではない。
大地震の後、ようやく繋がった電話で
「おかあさ〜ん」
開口一番、そう泣いた。
私はその時、すっかり二十歳を超えていたけれど。
人の親になっても
人の子であることに変わりない。
こんな風に体が弱っている日は
気持ちも一緒に弱ってしまう。
枕に顔を埋めて
おかあさん・・と泣いてしまう代わりに
「ママ、ここにいるよ」
そう言って、娘の熱い手を握り返す。
おかあさん。
その言葉には
なにか大きなものが詰まっているのかもしれないなあ。
それを口にするだけで、どこか安心するような
あたたかく 大きな何かが。
(2004.3.14)