冬時間
今ではないけれど
秋のはじまりに
一冊のノートを買った。
東欧の古い生地を使った
少し贅沢な布張り。
掌より少し大きく、厚みもある。
糸綴じなので
ノドまでしっかりと開くのが嬉しい。
だって何より
ノートは書くためのものだから。
つい最近も
一冊のノートを買った。
横長で、表紙にはNote Bookの文字。
昔から、ごく普通の文房具屋に並んでいるような
黒いテープの無骨な佇まい。
小学生だった頃、
おそらくまだ普通のアルファベットも書けやしないのに
筆記体を教えて欲しいと母にお願いしたのは
こんなノートをどこかで見たからではなかったか。
どちらもまだ、まっさらなまま。
当面の使い道は決まっていない。
それでも引きつけられるように手に取ってしまうノートには
いつか書かれるべきことが
すっかり決まっている気がする。
ノート自身が書かれるべき何かを知っているというか。
既に物語の書きつけられた本よりも、
時に、それは物語であるとさえも。
白いノートをためつすがめつ
物語に思いを巡らせる。
何かが、書かれる。
それはまだ、今ではないけれど・・・
今ではないけれど・・・
なんて、それはノートが増えていく言い訳にはならないかしらね、
やっぱり。
(2011.10.20)