冬時間
冬支度の旅
‘秋になると、旅にでるものと、のこるものとにわかれます。
いつだってそうでした。
めいめいの、すきずきでいいのです。’
紛れもなく、私は‘のこるもの’です。
出かけてゆくことは得意でなく、家の中にいることが好きなのです。
旅をするのも、音を探すのも、写真を撮るのも
きっとすべては それ自体を楽しむというよりも、
そうやって一つ一つ自分にとっての心地よさを探し、拾い集めて
巣作りすることが好きだから。
そうやって集めてきたものを
部屋でゆっくり反芻しながら暮らして行くことが何より好きだから。
そしてそういう暮らしは冬が一番ぴったりきます。
だから私は冬が好きなのです。
‘冬もま近な、ひっそりとした秋のひとときは、寒々として、
いやなときだと思ったら大まちがいです。
せっせと、せいいっぱい冬じたくのたくわえをして、安心なところにしまいこむときなのですからね。
自分のもちものを、できるだけ身近に、ぴったりひきよせるのは、
なんとたのしいことでしょう。自分のぬくもりや、自分の考えをまとめて、
心のおくふかくほりさげたあなに、たくわえるのです。
その安心なあなに、たいせつなものや、とうといものや、自分自身までを
そっとしまっておくのです。’
引用したのは フィンランドの小説家の文章。
はじめてこれを読んだ時には
この人は私の心の中を書いたのだろうか、と思うくらい
まさに冬時間なぬくもりを感じました。
出かけてゆくのは得意じゃないのです。
でもこの秋はちょっと足をのばしてみることにしました。
「きっと 気に入るよ」とこの本を勧めてくれた
旅の仲間とふたり、
冬支度の旅に出てきます。
これからやってくる冬を
よりひっそりとあたたかに過ごすために・・・・