冬時間
烏城スケッチ
クリスマスの朝、
サンタさんからのプレゼント騒ぎが収まるや否や、
思わず、私の口をついてでた言葉は
「みんな、これから烏城(うじょう)に行こう!」
お城?クリスマスに?
岡山城は、その黒い佇まいゆえ、
烏城と呼ばれています。
くっきりと晴れた冬空が
川面に影をおとして
朝の空気は身が引き締まるような冷たさ。
カラスさんに、合わせなくちゃね。
娘には黒いパイピングがアクセントの
ヘリンボーンのコートを。
まだちょっぴり大きめ。
ヘリンボーンの冬らしい雰囲気が好きで
昨年のセール時、
それでも奮発して 購入しておきました。
特別感が伝わるのかな、
いつもは、ピンクや花柄まっしぐらの娘ですが
このコートに関しては
‘おねえちゃんのコート’
と呼んで喜んで袖を通しています。
石段を駆け上り、
声を上げながらお庭を走り回る姿は
’おねえちゃん’とは言い難いものでしたけれど!
さあ、いよいよお城へ。
こんなことを言えば、お城に失礼かしら、
黒く堂々としてはいるものの
けれども、烏城は、
黒いレゴブロックで組み立てたような
どことなく親しみやすい風貌。
寒い日にもかかわらず、
沢山の人達がお城を訪れていました。
「お城って誰のおうち?」
「ここにもプリンセスがいたの?」
「エリック王子はいる?」
・・・・・・
烏城を訪れたのには、理由がありました。
友人が「烏城のカラス」という物語を
娘に創ってくださったのです。
クリスマスの朝、それは届けられました。
まず、私が読み、
次に万蔵氏が読んで、
最後に、娘を膝の上に乗せて
声を出して読みました。
およそ3年前、少しづつ言葉を話せるようになった娘にとって
黒くくっきりした姿で
カア、カアとはっきり鳴くカラスは
親しみやすい存在でした。
飽きずに「カア カア」と真似をしていたものです。
お話の中には、そのエピソードが
あたたかな筆で盛り込まれていて
読んでいて胸がいっぱいになりました。
’お母さんが女の子に話しかけています。
それを聞いて、カラスは今、鳴いてあげようと思いました。’
何度読んでも、この一行にじんと涙がでてしまいます。
カラスのやさしさに?
思い出の風景のやさしさに?
創ってくれた友人のやさしさに?
きっとその全てに。
「烏城のカラス」
ぜひ、皆さんもお楽しみください。
ほどよく硬質で、
ゆえに、時に見え隠れするユーモアや優しさ、
そのバランスの妙が
この作品にかかわらず、彼の文章の魅力です。
因みに、作中の‘赤福買って帰らなきゃ’というフレーズは
何度読んでも 私の台詞にしか思えないのですけれど。
二役で登場させてくれた友人のやさしさにも、
感謝!?
(2005.12.27)