冬時間
ゆかし
ゆかしい、という言葉は
なつかしく感じられる、
奥ゆかしく上品、
どことなく好奇心をそそられる、
というような意味を持つ古語です。
アンティーク・カフェ‘ゆかし’は
そのいくつもの意味の中を
曖昧にたゆとっていうような空間で
私の‘好き’がぎゅっと凝縮された場所です。
まったくの西洋風は その装飾や色使いが
時に息苦しく、重くさえ感じられてしまうし
まったくの日本風は 今の自分の生活スタイルで寄り添うには
無理がある。
その点、明治、大正から昭和初期にかけての日本のものは
陶器にせよ、ガラスにせよ、
日本特有のシンプルな美しさに
西欧のエッセンスと ちょっぴりの遊び心が加わり
とても魅力的で 心惹かれてしまいます。
おなじ花柄ひとつとってみても
ゴージャスにすぎることなく、
ほっとできる空間がちゃんと残されたデザインなのですね。
‘ゆかし’でサーブされる器たちも
そんな雰囲気のあるものたちばかり。
たとえば、朱色に白菊のカップ&ソーサー
ラインや色使いの妙が 心を掴みます。
昭和30年代のノリタケのカップで珈琲を
印判手のなます皿でバナナクランブルケーキを。
細やかなところにまで
心くばりと愛情が感じられる
心地よい卓上。
町がにぎわうクリスマスの週末も
ここだけはいつもと変わらぬ時間が流れているよう。
どっしりとした薪ストーブや
さりげない野の花。
チクタクと時を刻む8角形の掛け時計に
石畳の坪庭。
美味しい珈琲をすすりながら
その特別な時の流れに
気持ちもふっとほどけて。
ただひとつ、
黒いお椀に赤い和ろうそくという12月らしいディスプレイが
とても印象的で心に残りました。
窓の外は 冷たい雨。
とっておきの冬時間です。