冬時間
雪の日
わあ、雪!
カーテンを引いた私が
突然弾んだ声を出したものだから
何事か、と身構えた息子が
「だっこ、だっこ」と
不安と好奇心の入り交じった表情でしがみついてくる。
大丈夫だよ、雪だからね。
抱きあげて、窓を開けると
ぴたりと体を寄せたまま
まだ警戒は解かずに
それでも「ゆき、ゆき」と
もうすっかり、白い雪片から目が離せない。
ベランダにで出てみようか。
風にあおられ
雪はくるくると宙を舞っているかのよう。
「ゆきが、とんでるね・・・」
ようやく慣れてきた息子は
そっと手を伸ばしている。
水分を多く含んだ雪は
そんな彼の掌や、やわらかな髪の毛で
儚く姿を消してしまう。
そろそろ入ろうよ。
何度目かの催促で
ようやく室内に戻る気になってくれた息子。
「ゆき、ありがとう」
外に向ってお辞儀していた小さな背中に
一片の雪が、すっと溶けた。
ほどなくして、玄関のドアが開き
冷たい風と共に娘が帰って来た。
「4年3組にはねえ、ゆきおとこがいるんだよ〜」
雪が少ない土地柄ゆえ、
こんな日はみんなどこか高揚している。
それにしても、ゆきおとこ!?
さて、さて。
話を聴きましょうかね。
晴れの国の雪の日は、
静かで、賑やか。
(2012.1.25)