英国小景
英国を去る日、町のティールームで昼食をとった。
山羊のチーズのサラダとスコーン。
小さなテーブルには
あふれんばかりの にぎやかで香りたつお皿たち。
私の胸もまったくざわざわと おさまりがつかない。
旅の終わり。
言葉にし尽くせない想いや
印画紙に写し取ることが出来ない風景が
あれふんばかりに押し寄せてきて
ただただテーブルクロスの模様をなぞるだけ。
やがてランチタイムの波が引き
気が付くと彼の背中。
ファインダーを覗かずに
静かにシャッターをきった。
紅茶カップに触れるふりをして
この旅 最後の一枚を。
離陸まであと 数時間。
ティールームには静けさが戻り、
遠く窓の外で飛行機の音が聞こえる。