Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
「イギリスでいちばん美しいのは、おそらく樹木だろう。」 と、カレル・チャペックは書いています。 「もちろん、牧草地も警官も美しいが、 しかし、とくに美しいのは、主として樹木、 みごとに肩幅の広い、年輪を重ねた、 枝を四方に張りめぐらし、のびのびとした、 おごそかな、とても大きな樹木である。(略) しかし、ハンプトン・コートのオークの木の下に座って、 おのずから感じたのは、 古いものごとの価値、古い樹木の持つ崇高な使命、 伝統の調和ある広がりを認めたいというあぶなっかしい気分、 そして多くの時代を通じて、 みずからを維持するに足るだけの強さを持つ、 あらゆるものに対するある種の尊敬の年だった。 イギリスには、このようなとても古い樹木がたくさんあるように思われる。 この国で出会うほとんどすべてのもの、 クラブにも、文学にも、家庭にも、 何百年も経た、おごそかでおそろしくがっちりした幹と葉が なんとなく感じられる。」 冷たい雨の夜が続きます。 コーヒーに少し ウイスキーベースのクリームリキュールを加えて 独特のユーモアがちりばめられた カレルチャペックの作品を読むのは心愉しいひととき。 とろりとした甘い香りの中、カレル節の煙にまかれながら夜は深まっていくのです。 「ところが、古い樹木や古いものごとそれ自身には、 いたずらな小鬼、風変わりで冗談好きのおばけが住んでいるものだ。 イギリス人自身の内にも小鬼がひそんでいる。 イギリス人はかぎりなくまじめで、どっしりしていて、おごそかである。 それが突然、体の中で何かがざわめき、 なにか奇怪なことを口にし、 いたずら小鬼のユーモアがぱらぱらととび出したかと思うと、 ふたたび、古いなめし革の椅子のように まじめくさった顔つきにもどっている。 この人たちも、おそらく古い木でできているのだろう」 引用「カレル・チャペック旅行記コレクション・イギリスだより」(ちくま文庫) (2009.2.26) |
レッスンが始まってしばらくすると
ネコヤナギに気がつきました。 頼りなくバイオリンの弓を上下させる娘の先、 それはざっくりとガラス瓶に活けられています。 触れてみたくなるような 白銀色の花穂。 実際は もう少し先の時期、 春を告げる花なのでしょうか。 けれども一月のレッスン室でみるネコヤナギからは 真冬の静けさにそっと寄り添うような やわらかで、しんとした風情が感じられるのでした。 レッスンを終えて外に出ると、 朝から吹き荒れていた木枯らしは 幾分おさまり 暮れ方近い空からは 明るい日差しが降り注いでいました。 まるで一日分の光を取り戻すかのような眩しさで。 金色に揺れる枯れ草に目を細めて 手袋ごしに娘とぎゅっと手をつなぎます。 ネコヤナギ、バイオリンの音色、 一面の冬の光・・・ なんてことはないのだけれど、 そのひとつひとつの断片が、 心の中に小さな明るさを灯し ただそれだけで、 極上の冬の一日の締めくくりができたような気分になるのでした。
いえ・・・
ただそれだけで、というのは いかにも不十分ですね。 パーフェクトな冬時間は、お茶の時間があってこそ完結!? 帰宅したらまずは薬缶を火にかけなくちゃ、です。 そう、ギッシングが書いたようにね。 娘が「ゆめのあじ」なんて言っている ブルボンのクッキー、ホワイトロリータは 私が子供の頃にも、母が時々買っていましたっけ。 寒い日にはこんな素朴で懐かしいおやつがぴったりですね。 (2009.1.16) |
ウィロウの上のにっこりな源氏巻、 笑小巻(えみこまき)という名前がついていました。 笑顔は笑顔を呼びますね。 世の中は決して明るいムードの年明けではありませんが せめて、いや、だからこそ 私達一人一人が「和顔愛語」の心で 自分の周りから、あたたかな空気を作っていけたらいいな・・・ そんなことを 年の初めに思います。 2009年が明けました。 (2009.1.07) |