Blue willow のある食卓
    ーEveryday with Bluewillowーー






    サンタさんに、と沢山焼いたビスケットも最後の二枚、
    2012年も残り少なくなりました。





    気忙しい中にも、この時季ならではの高揚感。
    新しい年を迎える前に
    やるべきこと、やっておきたいこと・・・
    いくつものパズルのピースを埋めているようなここ数日です。
    つい欲張って根をつめてしまう頬に
    師走の風が心地いい。


    サイトもこのBlue Willow Journalを中心に据えましたし、
    今年はウィロウとの日々を存分に綴ることができました。
    読み返して、2012年を
    しばし振り返っています。
    分かちあってくださったみなさん、
    心より、ありがとうございます!
    そして、来年もどうぞよろしくお願いいたします。


    年末年始の冬時間、
    楽しいものでありますように・・・


    (2012.12.28)





    ワンピースを着るつもりでいたけれど
    学校から戻るなり「セーターとミニスカート」になっていて
    友達からの直前の電話で「やっぱりワンピース」と相成った模様。
    まったく、女の子というものは!
    散々、部屋の空気をひっかき回して
    目に見えないきらきらの粉をまき散らしたように
    娘は出かけていった。



    急に静かになった室内に、
    ・・・まだ、なにか気配がある。
    きらきらと、にぎやかな、なにか・・・
    目が合ったのは
    彼女がおばあちゃんへのクリスマスプレゼントに刺している
    クロスステッチだった。
    カラフルで、かわいらしい、それぞれのカタチ。
    お洒落して集っている女の子達、
    こんな所にも、みっけ!






    合唱部の友達とクリスマス会を楽しんできた娘。
    「今ちょうど練習している曲を歌いながら、プレゼント交換したんだ」
    嬉しそうに戦利品を披露してくれた。
    思えば、私も初めて友達同士でクリスマス会をしたのは
    高学年の時だった。
    プレゼント交換はもちろんのこと、
    友達のお母さんに、卵黄と卵白を上手に分ける方法を習って
    みんなでスポンジケーキを焼いたりもした。
    当時、母が習ってきて我が家にもお目見えしたばかりのような
    いかにも家庭の手作りといったスポンジ生地と
    まだ馴染みの薄かった生クリームのコンビネーション、
    そして、いちごではなく、
    缶詰フルーツとアラザンの飾り付け。
    その美味しさを今も覚えている。






    夜も更けて、きらきら娘も眠りについた頃、
    ビスコッティを焼いた。
    届けてもらったレモンで作ったレモンピールも入れる。
    届けてくれた友人は
    娘同士がバレエ教室が一緒だったことが縁で仲良くなった。
    三人の子供さんを育てる忙しい身でありながら、
    私が妊娠期に体調が悪く動けない時、
    なにかといつも助けてくれた。
    有り難く、でも、何もできない自分が申し訳なくて・・・
    そう告げた時、言われたことが忘れられない。
    「私も、これまで周りのお母さん達にいろいろ助けてもらってきた。
    また元気になって、何かできる時がきたら、
    今度は、他のお母さんにしてあげて。」
    恩返しではなく、
    それは、恩送り、と言うのだと後に知った。


    きらきらのクリスマス会はしなくても
    お母さん同士のこんな繋がりも、いい。
    送り、手渡し、つなげていく、優しさ。
    レモンピールは、しっとりと輝いて。



    (2012.12.17)







    十一月も終わりに近い朝を思い浮かべてほしい。
    今から二十年以上昔の、
    冬の到来を告げる朝のことだ。
    広々とした古い田舎家の、
    台所のことを考えてみてほしい。
    黒々とした大きな料理用ストーブがまず目につく。
    大きな丸テーブルと、暖炉の姿も見える、
    暖炉の前には、揺り椅子がふたつ並んでいる、
    暖炉はまさに今日から
    この季節お馴染みの轟音を勢いよく轟かせ始めたばかりだ。



    カポーティの「クリスマスの思い出」は
    書き出しからして、素敵だ。
    この台所に立つ女性、
    白い髪を短く刈り込み、テニスシューズをはき
    夏物みたいなキャラコの服の上に、
    くたっとしたグレイのセーターを着た女性が
    こんな風に叫ぶところから物語は始まる。


    「ねえ、ごらんよ!」
    その息は窓を曇らせる。
    「フルーツケーキの季節が来たよ!」





    フルーツケーキ、ではないけれど
    同じく洋酒漬けドライフルーツの入ったシュトーレンは
    この時期ならではのお楽しみ。
    粉糖をまとった生地にナイフを入れた時の
    さくり、とした感触が12月。
    薄いスライスを、一日に一枚、
    熱いお茶と共に。
    ぱらぱらと砂糖をこぼしながら。


    「クリスマスの思い出」には、
    終始、フルーツケーキが香っている。
    始まりはもちろん、
    材料を買い出しに行くシーンや
    (サクランボとシトロンとジンジャーとバニラと
    ハワイ産パイナップルの缶詰と果物の皮とレイズンとクルミとウイスキーと、
    ひっくりかえるくらい沢山の小麦粉とバターと、山ほどの卵と各種香料に調味料!)

    出来上がった31個ものケーキを
    窓枠や棚の上にずらりと並べるシーン・・・
    スパイスとお酒のふくよかな甘さが
    頁の間をずっと漂っている。


    だからこそ、時折感じる新鮮な空気に
    大きく深呼吸したくなる。
    切り倒したばかりのモミの木の、
    牧草地を駆け抜ける冬の風の
    大地に寝転んで剝くみかんの、
    芳しさ。
    それはむせかえる室内から
    戸外にでた時のような気持ちよさ。


    フルーツケーキの甘さと、冬の野の清々しさが交差する
    バティーと、その友スックの物語。
    何度も読んで、
    それでもやはり、涙してしまう物語。
    7歳のバティーと、60歳のスックの
    そしてその先の、フルーツケーキの行方を知るからこそ
    二人の迎えるこんな聖夜が
    切なく、愛おしい。



    蝋燭はもう手に持っていられないくらい短くなっている。
    火が消えてしまうと、星の光がさっと入り込む。
    星が窓に光の糸を紡いでいる。
    まるで音のないキャロルを歌っているみたいに。




    *


    「クリスマスの思い出」
    トルーマン・カポーティ
    村上春樹:訳
    (文藝春秋)



    (2012.12.13)