Blue willow のある食卓
    ーEveryday with Bluewillowーー







    胸の奥にふつふつと泡立ってきた思いに従って
    鍋の中をふつふつと甘く泡立たせている。


    喜んで冬に籠っているというのに、
    小粒の苺を目にした時の衝動は
    抑え難いものだった。


    粒が残る加減にぎゅっと煮詰めた苺を
    まだ熱いうちにスプーンで口に運ぶ。
    こわばっていた体の隅々まで
    行きわたり、染みわたり
    やがてみなぎってくる、確かなもの。





    「週末には寒波が戻ってくるでしょう」
    流れてくるニュースに、
    それでも、まだどこかほっとしたりもして・・・



    (2013.2.15)






    約二ヶ月ほどまえ、
    クリスマスティーを買った。
    季節柄、売り場には様々な紅茶が並んでいて
    ショコラ、マロン、バニラ、ストロベリーetc.
    まるでお菓子のような香りを纏っているものも多かったけれど
    何かもっと、違うもの・・・
    結局、北欧から輸入されたクリスマスティーを選んだ。
    表示を見て、馴染みやすいお茶だとは思わなかった。
    思えなかったけれど、
    この時期、北国の人たちが実際に飲んでいるようなお茶が飲んでみたい、
    そんなことを願ったのだった。






    封を開けると、
    薬草のような香りが広がる。
    紅茶売り場の甘くかわいらしい香りにはほど遠く
    いくつものハーブやスパイスが混じり合ったそれらは
    ストレートで、主張が強い。
    何度か煎れるうちに、少しずつ慣れてはきたものの
    クリスマスを過ぎても茶葉はあまり減ることもなかった。


    は繁忙期の一月。
    夜更けに仕事の手を休めて、
    ときどき、クリスマスティーを煎れてみる。
    何度、封を開けてもその香りに一瞬ひるむ。
    理屈抜きの違和感のようなものが、ある。
    でも、それが異国の「遠さ」なのかもしれない。
    そんなことを思いながら、
    性懲りもなく、でも、なにかを期待するように
    ミルクをたっぷり加えて飲んでみる。






    二月が来て、
    カレンダーを一枚めくる。
    今年のカレンダーは、東山魁夷の「北欧のメールヘン」
    同じようなものを
    東山氏の著書「白夜の旅」を初めて読んだ高校の時も使っていた。
    東山魁夷の北欧は、メールヘンだ。
    60年代の北欧、受験期の思い出、
    すべて含めて、私にとって
    メールヘン。



    (2013.2.2)





    オーブンが壊れた。
    あれ、調子がおかしい?と思い始めてからは
    あっけないものだったけれど、
    結婚の時から、15年も働いてくれたのだから
    天寿を全うしたと言ってもいいだろう。
    一体、このオーブンでどれほどのケーキを焼いてきただろう。
    頼もしき、よき相棒だった。


    焼けないと知ると、焼きたくて仕方がない。
    私が作るケーキなど、
    材料を混ぜて、オーブンに入れるだけ、
    ふと思いたって、何かの片手間にできるようなものがほとんどだ。
    甘さも、生地に混ぜこむものも、焼き型も
    台所次第の、気分次第。

    でも、ふと思いたった時に、何かの片手間に
    それができないのは、どこか落ち着かない心地さえして
    何かに駆り立てられるように、新しいオーブンを注文した。





    t外から戻ってきたときに
    ホームメイドのケーキがあると、ほっとする。
    とりわけ寒い季節は
    外出の疲れと、張りつめていた気持ちを、
    ゆっくりほどいてくれる。

    バターと卵、それに砂糖と小麦粉さえあれば
    それが作りだせることを知っている。

    できなくて「どこか落ち着かない心地」というのは
    このあたりから来ているのかもしれない。



    寒のただ中。
    古いオーブンで最後に焼いたのは、
    林檎とカマンベールのパウンドケーキ。
    ちょっぴり緊張を伴う保護者会の日だった。
    新しいオーブンで初めて焼いたのは
    チョコチップ入りのバターケーキ。
    凍えるような日曜参観の日に。



    (2013.1.27)



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