冬時間
青空だけに冷え込みが厳しく、
しかしそれゆえに
まさに「日和」だと思う一月の休日。
心待ちにしていた
「白雪にかがやく静寂の光景」展を観る為に、
東山魁夷せとうち美術館を訪れました。
開館直後の美術館、
私達家族の他にはまだ人影もありません。
展示室のベンチに腰掛け、
冬や雪をモチーフにした作品ばかりに囲まれていると
雪が降る時のような、
音なき音が 心の内から聴こえてくるような気がします。
静唱(せいしょう)Songs of Silence
冬の旅 Winter Journey
冬華(とうか)Winter Flower
静晨(せいしん)Silent Morning・・・
作品のタイトルもまた、その音を深めるばかり。
東山氏の北欧紀行文、「白夜の旅」との出会いは
高校時代、現代国語の模試の中でした。
‘食堂の大きな張り出し窓一杯に空も海も透明な青紫色にくれようとしている。’
始まりのこの一行で、私の心はすでに回答用紙を埋めることにはなく、
ただひたすらに続きが読みたいと
試験が終わるなり、すぐに注文に走ったことをよく覚えています。
あれから、20年間
今も「白夜の旅」はことあるごとに手に取り、読み続けている大切な一冊です。
(「スカンジナビアの色」)
「白夜の旅」で生まれた絵は
必ずしも実際の風景ばかりというわけでなく
自分の印象やイメージとも重ね合わせたものもあると
東山氏は書いていらっしゃいます。
文章を辿りながら私が旅しているのも
実際の北欧を、というよりは、
心象風景の中をという感じでしょうか。
それゆえに私にとっては
かけがえのない一冊なのです。
長いこと、文章や印刷物でしか知ることのなかった
東山氏の心の磁針の指す世界を、
実際に観ることができ幸せでした。
北の風景ばかりを集めた画集を二冊購入し、
満ち足りた気持ちで、美術館を後にしました。
(2009.2.15)