Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
春の本 ー思い出の本棚からー (4) しゃ もう一度、「春」 先日、絵本作家、五味太郎さんの特集が組まれた番組を見た。 スタジオには、沢山の、 それはそれは沢山の五味さんの絵本が並べられており 有名な作品や話題作が 司会者やゲストによって紹介されていく。 誰もが一度は目にしたことのある なじみのある作品の数々。 本の海、といってもいいほどの作品群から、 ひょいと、あの一冊が 取り上げられた時には、だから、不意打ちをくらったようで びっくりしてしまった。 「春」。 とりわけ代表作というわけではないだろうし 五味さんの作品の中では、 どちらかというと地味な、 つまり、このような場で日の目を見る作品ではないのかと思っていたから。 それを手に取られたのは女優の緒川たまきさんで 少し不思議そうに、興味深そうに 五味さんに尋ねられた。 「春の本・・・なのですけれど、窓ばかりなんですね」 そう、「春」に描かれているのは 窓の外の風景ばかり。 切り取られた窓枠の向こうを、 雲が、花が、こどもが、蝶が、パレードが、飛行機が、 春が横切って行く。 誰がそれを見ているのかしら・・・ でも、最後のページに描かれた部屋の中には ‘だあれも いない’ ただ春の室内の、しんと、ひいやりした風合い。 五味さんご自身も、 「春」が話題に上るとは思っていらっしゃらなかった様子。 思わず居直り、語り始められた。 「僕の体質、なんだろうね。」 五味さんにとって、春は少し重たい季節なのだそう。 この春夏秋冬シリーズも、 大好きな「夏」は一番に、「冬」もバンバン描けたけれど 「春」はなかなか筆が進まない。 出来上がったものが結果、 「だあれもいない」静かな春の本になったのだと。 やんちゃな男の子のような笑顔で おっしゃる。 いろんな春の本があっていいよね、と。 「春の何もかもが失われた感じ、 もの悲しさを覚える人には きっとシンパシーを感じる本なのでしょうね」 緒川さんがやわらかに頷かれた。 それにしても、番組の中で皆さんが飲んでいらした ミントとライムのお酒、モヒートが美味しそうで、美味しそうで! こんなお酒を飲みながらなら ちょっぴり重たい春も、 かなり覚悟のいる夏の話も楽しくできてしまいそう。 早速、モヒートをソーダで割ると、 弾ける泡と、カランと音をたてる氷。 すぐ、そこにまで来ているんだよ、と 夏がアピールしてる? 覚悟、いるなあ・・・ 心の中のためいきを、 元気な声がかき消した。 覚えたてのひらがなが読みたくて仕方のない息子が 「夏」を読んでいるのだ。 一文字、一文字を確かめるように。 大きな声で、ていねいに。 かーん かーん かーん かーん どこかで かねを たたくような じゅん じゅん じゅん じゅん どこかで おゆが わくような わあい わあい わあい わあい だれかが ぼくを よんでるような 「春」「夏」 五味太郎(絵本館) (2013.5.23) 「 |
春の本 ー思い出の本棚からー (3)
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