Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
そりゃ、贅沢を言えばきりはないけれど どうにか過不足なく、日々営めている。 今あるものに、ありがとう・・・ そんな殊勝な気持ちに 突如、「待った」がかかってしまった。 きっかけは、帰省したことだ。 急ぎの仕事があり、ノートパソコンも資料も ごっそり持って移動して 父の机を借りることになった。 父の部屋は、かつての私の部屋だが そんなことに興味のかけらもない父らしく 意図的にしつらえられた感は全くない。 それでも、机に着いてみると、 なんだろう、 えも言われぬこの落ち着きは・・・ 長いこと忘れていたこの感覚。 実際、予想以上に仕事もはかどった。 そして私は気づいてしまったのだった。 そうだ、 私の生活にはこれが欠けていた。 曇りも、迷いもない確信だった。 私に必要なのは、これ! 気づいたならば、前進あるのみ。 幸いなことに、寝室の窓辺に十分なスペースがあった。 どうして今まで思いつかなかったのか、 本棚の横の、まるであつらえたような空間。 机を置き、窓から広い空を眺めた時は 長い旅からようやく戻ってきたようですらあった。 こうして、実家体験から2週間あまりで 私に城ができた。 思えば、結婚してこちら、 仕事も、手紙も、日記も全てダイニングテーブルだったし それをあたりまえに感じていたけれど 城にすっぽりはまりこむ時間は かつて持っていた感覚を取り戻してくれた。 物理的に、ひとりに立てこもること 精神的に、ひとりに引きこもること、 机という小さなスペースが叶えてくれるそれらの力に助けられて 10代の荒波をくぐってきたのではなかったか。 机という私的空間は、 勉強や仕事に集中できるのは言うまでもなく リフレッシュとリセットの場でもあるのだ。 まあ、今のところ、足下で息子がプラレールを走らせていたり 娘がベッドで昼寝していたりすることもあって(なにせ、寝室ですから!) なんだかんだと、賑やかしくなっていることも多いのだけど。 机周りは、あまり整いすぎず
自分ルールの中で、ほどよく雑多な感じがいい。 ごく、プライベートスペースなので 家族の集まる場所にはちょっとね、というものに囲まれるのも愉し。 ペン立てから顔をのぞかせているのは 大好きなレイモンド・ブリッグズのスノーマン! もはやとっくの昔にインクはきれているけれど 高校生の頃からずっと大切にしているこのボールペンもまた 机の上の住人のひとりだ。 そして、鉛筆立ては クリスマスプリザーブの入っていた瓶。 この時期になるとアヲハタが販売しているプリザーブ、 瓶のデザインがかわいらしいこと、 思い立ったらすぐにフルーツケーキを焼けることもあり (プリザーブの中身は、ラムブラウンと、クランベリーレッドの二種類で それぞれ、ドライフルーツの洋酒漬け。) いつしか、この時期の定番に。 瓶のデザインがとりわけ気に入っている2005年のものは こうして鉛筆立てとして、手元に残している。 クリスマスでなくとも、 春夏秋冬、机の上にはいつもマリアさまと幼子イエス。 気がつけば、11月の扉が閉まるのも目前。 ここ数日で、風はぐんと冷たくなった。 昨日は、花屋に寄って クリスマスホーリーの鉢を買った。 晩秋の青い空、冷たい空気、強い風。 色とりどりの落ち葉が、小鳥のように舞いおどる中 自転車の籠に鉢を入れてペダルを踏む高揚ったらなかった。 冬が、やってくる! 12月の扉が開いたなら、 わが家もクリスマスツリーを飾ることにしよう。 (2015.11.2) |
十一月の扉 スコーンブームは、まだまだ続行中。 美味しいスコーンが食べたくて、 11月のはじまりの日 久しぶりのティールームへ。 家族でテーブルを囲み、 今の息子はこの時の娘と同じ年になったのだということに驚く。 ティールームでいただいたショートブレッドも美味しくて、 紅茶にはやはり素朴な英国の焼き菓子、を再確認。 今日は、イギリス中央部の町シュールズブリー由来の シュールズブリービスケットを焼いてみた。 スコーンとビスケットの中間のような食感。 14歳を目の前にして、紅茶の美味しさに開眼した娘。 紅茶がすすむ〜と、ビスケットに手が伸び、 ビスケットがすすむ〜と、紅茶もおかわり。 ティールームを訪れた後は、本屋にも足を運んだ。 中学校の授業で作成したポップを、実際に使ってもらっているという。 娘が作っていたのは、高楼方子氏の「十一月の扉」*。 お砂糖を入れない紅茶の美味しさが分かってくる年頃、 まさに、14歳の少女の秋の物語。 タイトルに組み込まれたセピア色の鍵が 十一月の物語に誘ってくれるよう。 誰かの目に留まり、本の扉を開いてくださるきっかけになるかしら・・・ *「十一月の扉」 高楼方子(レブリオ出版)
(2015.11.10) |