Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
大学通りの銀杏も色づいてきた。 よく晴れた土曜日。 レッスン帰りに、ちょっと寄ってみようか。 なんだか楽しそうな気配・・・ 「銀杏と古本まつり」やってるんだって! みんな、思い思いに楽しんでる。 高揚を押さえきれず、 早速、本の海に吸い込まれていく娘。 すれ違うたびに、「なにかいいものあった?」 一方、息子は芝生の海原に駆け出して ぐるぐるぐーるぐる、回遊魚のごとく。 「ぼくは、本よりも遊ぶほうがいいんだー」 ・・・はいはい、存じ上げておりますよ。 残念ながら古本との出会いはなかったけれど ドイツの古いクリスマスカードを一枚、買いました。 柊とベル、そして、こまどり。 年々早くなる街のクリスマスムードに 「せめて金色の銀杏の葉がすべておちてしまうまでは・・・」と 心で待った!をかけてはいるけれど はからずも、でも嬉しい、 今年一番のクリスマス支度になりました。 楽しい秋のひとときでした。 (2016.11.12) ー 昨日の続きを、すこしずつ ー がっくり・・・ 自分のふがいなさに、力もでない。 でも、向かい風の中、自転車をこぐ。 こんな時は、向かい風の方が、 いっそ、救われる。 がんがんこいで、遠回り。 また、林檎を買いに寄った。 林檎は部屋に灯りがともるよう・・・ なんて書いたけれど、 心に灯りをともしたい時だって! こんな日は、あたたかく、甘く、満たされたい。 パイを焼く元気はないから アップルクランブルの登場となる。 バニラアイスクリームも添えて、 心の灯りを、もひとつ、増やす。 そして、夜。 息子とベッドで読む中で 最近、一番最後に必ず手に取る本がある。 「よるのかえりみち」 日暮れがやってきて、 部屋に灯りがともりはじめる。 それぞれの部屋で、それぞれの時間を過ごす人たちが 窓越しに見える。 (登場人物たちは動物なのだけど、どこまでも「人」である。) 一日の終わりの、静かで、満ち足りた時間。 部屋からは、においがしてくる、声もする、 音はあったり、なかったり。 一ページ、一ページ、 その部屋の空気に吸い込まれていくよう。 なかなか、ページは進まない。 読んでいるのか、うたた寝しているのか ソファに横たわり、本を開いている人がいる。 添えられているのは、こんな文章。 「きのうの つづきを すこし よむ」 そのやすらぎに、また、ひとつ、 心の灯りがともる。 きのうの つづきを すこしずつ。 「すこしずつ」、がいい。 日々、いろいろあるけれど 「すこしずつ」しか進まないけれど。 どんな日も、一日、一日、 そうやって日々をつないでいけるということ・・・ 今日という日の終わりに、 穏やかな時間を持ち、 また、明日を迎えられるということ・・・ 気がつくと、息子はもう、寝息をたてていて 枕元の灯りを、おとす。 *「よるのかえりみち」 みやこし あきこ(偕成社) (2016.11.04) 一年半前、遠くに越した娘の友達から 久しぶりに電話があった。 それぞれに忙しい中学三年生。 なかなか連絡もとれないし、 最近は便りも途絶えがちだっただけに 声は、限りなく弾み 電話は、長く、長く続いた。 ようやく静かになったかと思うと とんとんとんっ、 娘は足取り軽く私の部屋に駆け上がってきて 嬉しそうに話を聞かせてくれた。 そして最後、一言つぶやくように 「私も頑張らなきゃ!」 親や先生・・・大人が言っても響かないことを 友達は、言葉ではなく、 その存在自身で伝えてくれる。 素敵なことだ。 こんな友達と一緒に思春期を歩けたら・・・ 彼女が引っ越しする時は、私まで残念に思ったものだった。 でも、彼女たちは ちゃんと一緒に歩いているのだった。 ありがとう。ありがとう。 10月末の冷える朝。 さつまいもを角切りにして、蒸しパンの生地に加える。 蒸気の中で、やがてふっくら黄金色。 私は、私がしてあげられることを、 するしかない。 (2016.10.29) |