Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
昨秋から、ときどき「ウォーキング(自称!)」をしている。 運動不足の夫婦の気まぐれに 子供達も散歩気分でひっついてくる。 休日の朝まだ早き、 実際、それはすこぶる清々しい時間だ。 でも、このところの寒さ。 最近は、誰も行こうとは言い出さなかった。 「今日は、ウォーキングに行こうよ」 日曜日、思い出したように息子が言う。 なんとなくかわしていたら、 まじめな顔で、びしり。 「ほら、パパも、書いてたでしょ。 できるだけ遠くまで歩いていきましょう、って。」 先月、誕生日にもらったメッセージカード、 確かにそこには書かれていたのだった。 「健康に気をつけて、できるだけ遠くまで歩いていきましょう。」 お互い元気に、できるだけ遠くまで・・・ その為にも、次の休日こそは歩きましょうか。 (2017.2.11) |
はじめてチーズケーキを作った10代の頃以来、 いろいろなレシピで試してきた。 生クリームを入れたもの、 ヨーグルトやサワークリームを足したもの・・・ それぞれに美味しかったけれど 今、自宅で一番よく焼くチーズケーキに 特別な材料は使わない。 クリームチーズの他には、小麦粉、卵、砂糖、 たいてい、家にあるものばかり。 ただ、卵白の泡立てだけはしっかりする。 角が立つほど固いメレンゲを作って生地に加えるのだ。 ただそれだけ。 卵の形状を変えるだけで 何も加えてはいやしないのに、 何かを加えたかのような、 何かを加えたよりも、 好ましい奥ゆきが、味わいに生まれてくる。 確信犯的にチーズケーキを準備して 宅配便のベルを待つ。 本が届く日、 時間のかかる泡立ても苦にはならない。 ‘音の糸は、音の意図’ 新聞の広告欄で見ただけで 中身も見ずに注文してしまった。 でもこれは、 賭けのふりをした確信犯。 一編、ゆっくりと言葉の糸をほどく。 あ、ここにも。 特別なものは、何も入っていない。 いつもの見慣れた言の葉たちなのに こんな風に紡がれ、語られることで なんという、奥ゆきだろう。 この味わい、 何かを加えて得られるものではない。 うす桃色の栞を挟んで、珈琲を飲む。 チーズケーキを食べる。 続きはまた、明日。 *「音の糸」 堀江敏幸(小学館) (2017.02.8) |
中学校最後の参観日があった。 凍える廊下の先に、3年A組。 教室に入ると、 日光がふんだんに入り 思いのほか、あたたかかい。 教室では、数学の授業の真っ最中、 班ごとに机を合わせ 図形の問題に取り組んでいた。 明るい日差しがそう思わせるのか、 時折、笑いが生まれる和やかな雰囲気のせいなのか、 皆、あえて、平静を保ちたいときなのか、 受験秒読みの緊張感は 伝わってこない。 ふと、見上げると 黒板の上の模造紙に書いてあるのだった。 「見送り三振より、空振り三振。 A ・A オー!」 ぐっ、と喉の奥に熱いものがこみあげてくる。 戦いは、厳しい。 結果を出せるひともいれば、そうでない人もいる。 努力が形にならないこともあるし、 不条理なことだっておこりうる。 でも。 見送るのではなく、 バットを振るからこそ見えてくるものも、ある。 振らないと掴めないものが、確かにあるのだ。 だから、どうか臆せず! エイ エイ オー。 次に学校に行くのは、もう卒業式。 制服を取りにきたのは、ついこの間の気がするのに・・・ 感傷にかられて、卵サンドが食べたくなる。 青春は遠くになりて、の私は 元気なレタスではなく、芥子をきかせた卵サンド。 春待ちの苺のジャムサンドも一緒に。 (2017.1.21) |