Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
ガラス作家の尾崎雅子さんに、 真鍮の表札を作っていただきました。 昨秋から相談を重ね 形や字体などを少しずつ調整。 前回の鏡と同じく、 細部まで希望を叶えてくださり大満足です。 日差しや、風雨を受けつつ 時とともに表情を変えていく真鍮。 これからの経年変化が楽しみです。 近所に明治時代の洋館があり カフェとして使われているのですが そちらにも尾崎さんのステンドグラスがあります。 独特の静謐感が漂う尾崎さんの作品は 古い建築とも、呼吸がぴたり。 ここだけ時間が止まっているようです。 久しぶりに娘とそのカフェに。 さまざまな選択肢の中から 最終的に地元での進学を希望した彼女。 願いが叶い、 春からはこの地で大学生になります。 18年前のこの時期、 この場所でベビーカーに眠っていた赤ちゃんが、 随分と大きくなったものです。 18年間という成長の過程で 自分の好きなものを見つけ、 その道に進む切符を自分の力で手に入れることができた。 そのことがまず、大きな喜びです。 子育てに終わりはありませんが 合格の知らせを受けたときは 親としてひとつの区切りを迎えたような、 そんな感慨に満たされました。 sate まだ寒い夜に ブランデーケーキを。 ブランデーをケーキにしみこませて じっくり寝かせること数日間、 味わいの奥行きが広がります。 大学4年間でどこまで己の奥行きを広げられるかは まさに自分次第。 新調した表札の玄関から 春からも「いってらっしゃい」が言えること、 これからも近くで応援できることを しみじみ嬉しく思う夜でした。 (2020.3.08) 引っ張りだしてきた新聞の切り抜きは すでに色褪せていた。 2011年5月1日の書評蘭だ。 紹介されている本は 第二次世界大戦前後のオランダが舞台の物語、 「あらしの前」「あらしのあと」。 文章には”この状況を生きる私たちに”というタイトルがついており 東日本大震災から間もない頃のものだった、 と思い出す。 * ある日、子どもたちの一人が 「機嫌が悪いのは戦争のせい」と言う。 多くの人々が全てを戦争のせいにする空気が 子供たちにも伝播したのだ。 母は夕食の席で皆にはっきりと語りかける。(略) 「わたしたちがなにをしようと、 それは戦争のせいじゃなくって、 わたしたちがするからするのです」。 深い言葉である。 危険性を口にすること、それでも冷静でいること。 誰かの責任にするのではなく 自分がやることに自分が責任をとること。 現在の状況を生きる私たちの心に 本書のメッセージが静かに突き刺さる。 佐々木 俊尚 (ジャーナリスト) * 2020年、早春。 得体の知れないウィルスに じわりじわりと追い詰められている。 前代未聞の事態に 家族内でも捉え方や意見は異なるし、 あちらこちらに生まれている不穏な空気に ともすれば、飲まれそうになってしまう。 だからこそ、本の中の母親の声を聞きたくなったのだ。 はじめて読んだ時、 冷たい水を浴びせられたようにはっとした言葉を、いま。 「わたしたちがなにをしようと、 わたしたちがするからするのです。」 *「あらしの前」「あらしのあと」(ドラ・ド・ヨング 著 吉野源三郎 訳 岩波少年文庫) 朝日新聞 2011年 5月1日付け朝刊より (2020.2.28) |