冬時間
MAY
ーふしの川沿いの風景ー
まだ若かった父が、都会を引き上げ
山口に土地を探すとき、
広い庭が持てるような土地は買えないけれど
ここなら この公園が庭になる、と
まさにこの真ん前の住宅地に家を構えたのでした。
それから高校を卒業するまでずっと
私はふしの川の流れる河川公園のそばで大きくなりました。
遊具ひとつないこの公園を
子供の頃は退屈に感じたこともあります。
けれども
成長した私がどこか‘なつかしさ’を感じながら
イギリスの田園に惹かれるようになったのは、
気持ちよい木陰をつくる枝を広げた大木や
(イギリスのお話の挿絵にはよくそんな風景が登場しますよね)
水面に映り、流れゆく雲の様子に
(まるでコンスタブルの絵のようだと思いませんか?)
幼い頃から親しんでいたから、なのかもしれません。
そして 大人になった今でも
護岸のためのブロックがチョコレートみたいだ、などと
子供の頃と同じようなことを考えてしまう私がいたりします。
四季を通して、美しい姿で迎えてくれる川辺、
特に新緑のこの季節は
日差しをうけてきらきら光る水面と、眩しい緑が
染みいるような美しさです。
ーパークロードの風景ー
山口市の中心にある
パークロードと呼ばれる
市役所ではじまり県庁で終わるこの道は、
ケヤキをはじめとする一万本の木々に囲まれ
美術館はじめ、博物館、図書館などの文化施設が立ち並ぶ道。
その街路樹と佇まいの美しさゆえ
「都市景観100選」「日本の道100選」にも選ばれています。
美術館も博物館も図書館も
もう それは数え切れないくらい通い
その時々の、数え切れないくらいの思い出がありますが
それらの思い出といつもセットで、
このパークロードがあるのです。
こちらもまた、四季を通してさまざまな表情をみせてくれる
大好きな場所なのですが
紅葉のシーズンと並び、とりわけ新緑の今が 抜群に素敵です。
2年前のエッセイ「闊歩する5月」で
教習車で通った5月の街路樹があまりに印象的で
はじめての自分の車をMAYと名付けた、と書きましたが
まさに それがこの場所なのです。
今年のGW、美術館では「シエナ美術展」をしていましたので
あちこちでイタリアの国旗がはためいていました。
ちょうどパークロード傍の丘には
サビエル教会があり、
時間がくるたびに鳴り響く鐘の音とともに
今しがた観たばかりの宗教画が
よりいっそう心に深く刻み込まれ・・・
と、いいたいところですが
今日は第一日曜日。
この道のわきで「骨董市&フリーマーケット」が
開かれる日です。
美術館をでるやいなや
いざ、ゆかん、とばかりに足どり軽く
私の心は まったく世俗的なドキドキで
波打つばかりなのでありました。
神よ、お許しを!
(2002.5.05)